スノーピーク純利益99%減 キャンプブーム失速の影響は本当? 老舗アウトドア雑誌の部数動向から考察
■キャンプブーム失速か?
先日、久しぶりに友人とキャンプに行ったが、キャンプ場を見渡していると明らかにソロキャンプをやっている人が減ったように感じられた。コロナ禍で、ソーシャルディスタンスが取れる上に手軽とあって注目が集まったソロキャンプ。一時期は至るところにソロキャンパーがいたのだが、コロナ禍の様々な制限や自粛ムードの緩和に伴う娯楽の多様化で、キャンプ人口全体も減少しているようである。
キャンプブームの陰りは、アウトドアメーカーの業績にも表れている。アウトドア用品大手のスノーピークが発表した2023年12月期決算によると、純利益は99.9%減の100万円だったという衝撃的なデータが示された。なお、売上高は前年比16.4%減の257億円、営業利益は74.3%減の9億円となっている。
朝日新聞の報道によると、アウトドア用品を販売する直営店舗やキャンプ場の売り上げは堅調だったものの、小売店を通じたキャンプ用品の売り上げが減少したためという。また、コロナの5類移行前はキャンプへの関心が高まっていたが、5類移行後は旅行をはじめとする他のレジャーに消費者の関心が移ったことも原因のようだ。それでも、筆者の周りのキャンプ好きはこう分析する。
「最近、SNSでキャンプに飽きて中古ショップに売ったと思われるキャンプ道具の写真が話題になっていましたよね。確かにキャンプ人口は減ったかもしれないけれど、熱心な愛好家は決して減っていないと思います。私の周りでも今年に入ってから高額なキャンプ道具を買った人はいますし、依然としてキャンプブームは続いているという見方です」
その後スノーピークは、米投資ファンドのベインキャピタルと組んでTOBを実施し、MBOによる株式非公開化を行う方針を固めたと日本経済新聞が2月17日に発表。2月19日には株価が高騰、投資マネーが集中している状況で、今後のスノーピークの方針にも注目が集まっている。
■コアな愛好家は減っていない
参考までアウトドア雑誌「BE-PAL」の発行部数を見てみよう。日本雑誌協会が発表した、2023年7月〜2023年9月の3ヶ月毎の平均印刷部数は約8万333部である。雑誌が売れなくなったといわれる時代においてかなり健闘している数字であり、多くの月刊漫画雑誌よりも部数が多いくらいだ。
なお、コロナ禍が始まる前、2019年10月〜2019年12月の「BE-PAL」の平均印刷部数は約10万5000部だった。コロナ禍真っ只中の2021年10月〜2021年12月の平均印刷部数も変わらず約10万5000部である。それからすると部数は落ちているものの、大幅な減とはなっていない。
さらに、キャンプブームの火付け役となった漫画・アニメの一つ『ゆるキャン△』も各社とのコラボが続いている。キャンプをウリにした旅行商品も各社から発売され、茨城県など関東地方の自治体は都心のアウトドア好きに向けた観光PRを行っている。
こうした傾向をみると、確かにコロナ禍の時ほどの勢いはなくなったものの、依然としてアウトドアブームは続いていると考えることはできる。日本の自然を満喫できるキャンプは、休日を楽しむ娯楽としての地位を確立したと言っていいのではないだろうか。