漫画文化の発信基地へ 山下和美、笹生那実ら大御所漫画家の保存運動が結実 「旧尾崎テオドラ邸」開館決定
■若手漫画家はどんどん見に行こう
山下は以前、記者の取材に「保存するだけでなく、広く公開して、活用することにこだわりました」と語っていた。こうした保存後の活用のビジョンが明確だった点も、賛同を集めた要因だと記者は考える。3月1日~12日には、38人の漫画家・造形作家による「旧尾崎テオドラ邸チャリティ作品展」が、3月15日~4月9日は「三原順の空想と絵本展」が開催される。その後も、漫画家の原画展など注目の展示会が続々開催される予定という。明治建築と日本の漫画文化の魅力を堪能できる、新しい東京の名所になりそうだ。
ところで、記者の妻は漫画家であり、記者も妻に依頼されて漫画の資料集めのために写真撮影にいくことが多いのであるが、こうした洋館は“異世界系”や“ファンタジー系”の漫画を描きたいと思っている漫画家は必見だと思われる。実際、当日に話を聞いたある巨匠漫画家は、「旧尾崎テオドラ邸」の細部のディテールに注目し、見入っていたのだ。優れた本物の建築を見てインプットをすることが、名作を生み出す原動力になっているのだと実感した。若手の漫画家はイマジネーションをかきたてられるはずである。漫画家によって残された洋館が次世代の漫画家に刺激を与え、新たな名作が生まれる場になったら、どんなに素晴らしいことだろうと記者は思う。
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