アオアシ、僕とロボコ、正反対な君と僕……「平」と名のつくキャラはとにかくいいヤツ説
長年、漫画を読んでいると時に世界の真実に辿り着く瞬間がある。筆者が偶然にも気づいたある1つの共通点、それは「平」と名のつくキャラクターには「とにかくいいヤツが多い」ということだ。本記事では作品を横断して、平という名を持つ登場人物の人間性について語っていきたい。
気の良い兄貴肌、エスペリオンの良心『アオアシ』中村平
まずはJリーグユースチームを舞台に描いたサッカー漫画『アオアシ』(小林有吾)から中村平を紹介したい。主人公の青井アシトが所属するJリーグユースチーム、東京シティ・エスペリオンユースに所属する、アシトの1つ上の先輩であり小学生の頃から東京シティ・エスペリオンの下部組織に在籍している選手だ。
ユースチームに所属する選手はほぼ全てがプロを目指していると言って差し支えないだろう。トップチーム昇格を目標に闘う選手達はチームよりも個人としての評価を高めることを優先に考えるだろう。そんな中、平は面倒見の良い兄貴肌な気質を発揮している。チームに新しく合流した一癖も二癖もあるメンバーに言葉をかけ、優しく迎え入れるのだ。平はその性格と振る舞いから、チームメイトに大きな信頼を寄せられている。俺が俺がの我が強い選手が多い中で、平のような存在は決して小さくない意味を持つのだ。
しかし、平はある日突如サッカーを引退することを選択し周囲を驚かせる。葛藤を抱えながらもがき続けたサッカー人生の中で、上へ登っていく人間との決定的な違いを悟った平は、悔しさを噛み締めながらも次の世代に想いを託す。憧れ続けたプロへの想い、サッカーが本当に大好きだったことを振り返りながら、多くの時間を捧げてきた練習グラウンドに最後に一礼する平。彼の人間性が垣間見えるシーンには胸に込み上げてくるものがある。決してメインストリームで描かれる人物ではないものの、読者の記憶に残る印象的なキャラクターだ。
ロボコの暴走も笑顔で包み込む『僕とロボコ』平ボンド
その優秀さと何より可愛さで圧倒的な人気を誇る超高性能AIメイド型ロボット「オーダーメイド」をママにお願いして買って貰ったけれど、届いたのはなんだか思っていたのと違う!超個性派のオーダーメイド「ロボコ」のご主人様が『僕とロボコ』(宮崎周平)に登場する漫画大好き小学生の平ボンドだ。
友達の家にあるオーダーメイドとは、見た目も性能もヒザの形状も何もかもが違う。オマケに53万を遥かに上回っていると思われる超絶怒涛の戦闘力。感情剥き出しのかまってちゃんで、兎にも角にも面倒臭い性格のロボコに対して、日々ツッコミを入れつつも最終的には優しく受け入れるボンドの姿は慈愛に満ちている。
並の小学生であればロボコの数々の蛮行に早々に憤りを覚えても決しておかしくはない。そんなロボコへの的確なツッコミは最早、愛すら感じるレベルにある。ロボコのボケ(本人はボケているつもりはないのかも知れないが)に対して時に共感し、時に驚嘆する七色のツッコミスキルは本人のセンスも去ることながら、ロボコのキャラクターを活かす良いエッセンスとなっている。最早、平ボンドの存在なしにはこの作品は成り立たないと言っても過言ではない。
また、平ボンドにはガチゴリラとモツオというこれまた友達想いで家族想いの優しさに満ちた親友が存在する。類は友を呼ぶとはまさにこのことだろう。せめて漫画の中だけでも優しい世界であって欲しいものだ。