【推しの子】実写化、あのちゃんの「MEMちょ」はハマり役？　近いようで遠いキャラクターを考察

　アニメ化で大ブレイクを果たしたアイドル漫画『【推しの子】』の実写映像化が決定し、SNSがお祭り騒ぎになっている。今冬、ドラマがPrime Videoで独占配信され、映画版は劇場公開されるという。

　人気漫画・アニメの実写化といえば当然、気になるのはキャストだ。双子を残してこの世を去った“完璧なアイドル”星野アイ役に齋藤飛鳥、アイの死の真相に迫るアクア役に櫻井海音、その妹でアイドルとして輝きを放つルビー役に齊藤なぎさ。脇を固めるヒロインたちも、有馬かな役に子役出身の原菜乃華、黒川あかね役に「ポカリスエット」に『ゼクシィ』と、若手女優の登竜門といえるCMに起用されてきた茅島みずきが起用され、キャラクターの背景も考えた配役に見える。

　そんななか、Xのトレンド上位に浮上しているのが、ルビー・有馬かなとともにアイドル活動をするYouTuber「MEMちょ」と、それを演じる「あのちゃん」だ。ファンそれぞれにイメージがあり、キャスティングにズレを感じる人がいるのもやむを得ないなかで、“MEMちょ＝あの”に関しては、ともに「愛らしいビジュアルで独特な空気感を持つインフルエンサー」として、好意的な声が多く聞かれている。

　他方で、MEMちょは「あのちゃんがあのちゃんのまま演じれば成立する」タイプの尖ったキャラクターではない。そのネーミングとYouTuberという職業もあって、ぶっ飛んでいそうな人物だが、明るくヤンチャ感のあるキャラクターとは裏腹に、実は家庭の事情で苦労を重ねてきた。ある意味では、作中で「最もまとも」な人物なのだ。

　MEMちょはもともと「18歳のYouTuber」……として登場するが、実際は7歳サバを読んでおり、実年齢は25歳。アイドルに強い憧れを持ちながら、早くから働き家計を支え、弟たちを大学に入学させている。いざ自分の夢を叶えようと考えた時には、オーディションの年齢制限を超える23歳に。働くために高校を休学していたこともあり、嘘ではないだろうと「現役女子高生」としてライブ配信活動を始めたところ、大人気に。そんななかで、アクアも出演する恋愛リアリティーショーから声がかかり、ルビーとともにアイドル活動をすることになる。

　“バズのプロ”を自称するだけあって戦略的思考にも優れ、また豊富な人生経験から相手を理解しようとする優しさも備えている。悪目立ちすることなくアクアやルビーを支える好人物で、周囲の恋愛事情にはニヤニヤしつつ、年長者として繊細に気を配っていることが伺えるシーンも。主要キャラクターの中で必ずしも活躍の機会が多いとは言い難いが、好感度が高く“推し”たくなる要素が多いのがMEMちょだ。フリーダムで特別なタレント性を持つ「あの」のパブリックイメージを考えると、近いようで遠いように感じられる。

　つまり、あのは本作で「キャッチーな存在感はそのままに、抑えた演技をする」ことを要求される場面がありそうで、実際に作品を観るのが楽しみになってくる。シリアスな演技、等身大の演技もしっかりこなすことができることは、これまで出演した映画・ドラマで証明しており、ハマり役になることに期待したいところだ。

　知性や苦労、努力という、どちらかというと“シリアス寄り”の属性を持ち、しかしゆるい空気感は失わず、読者にとって癒しになることも多いMEMちょ。あのが演じることでどんな表情を見せてくれるのか、注目したい。