瀬尾まいこ×上白石萌音『夜明けのすべて』対談 「魅力的な女性像になったのは上白石さんが演じたから」
魅力的な女性像が立ち上がっているのは上白石さんが演じたからこそ──瀬尾まいこ
パニック障害やPMSというデリケートなモチーフを扱っている『夜明けのすべて』は、原作を読んでいても、映画を観ていても、何度も胸が苦しくなる。けれども藤沢さんと山添くんの仲が深まるにつれ、物語の先には光が感じられるようにもなる。このふたりを演じた上白石と松村の姿は、瀬尾の目にどう映ったのだろうか。──山添くん役の松村さんとの掛け合いはいかがでしたか?
上白石:すごく楽しかったです。藤沢さんと山添くんは交流をしていくうちにやがて“同志”ともいえる特別な関係になりますが、とくに序盤のほうは慎重に演じていかなければなりませんでした。このふたりが男女の仲に見えてはならないし、お互いにときめくような瞬間が生まれてしまったら、作品の根幹が崩れてしまいますから。
瀬尾:映画の中のふたりの関係は、見ていて心地よかったですね。まるで小説の中から藤沢さんと山添くんがやってきて、目の前でお喋りをしているかのような印象を抱きました。私は会話のシーンを書くのが好きなのですが、思い浮かべていたリズムやテンポ感のふたりのやり取りがこの映画には収められています。ずっと聴いていたくなりました。
上白石:物語後半の何気ない会話は、実際に演じていて心地よかったです。相手の顔色をうかがったりすることもなく、ポンポンポンポンと言葉を交わし合う。あの場の空気感がとっても愛おしくて。それはきっと、過去にほかの作品でご一緒させていただいた経験も大きかったはずです。それに、松村さんも心から原作とこの作品の現場を愛していらっしゃるのが伝わってきました。三宅監督と三人で妥協なく対話を重ねながらシーンを積み上げられたあの時間は、私にとって宝物です。瀬尾:藤沢さんも山添くんも、活字で読むと読みづらいセリフがいくつかありますよね。ちょっとドキッとするような。でも上白石さん本人が持つ柔らかな雰囲気が、あのセリフたちをも丸みのある言葉にしています。藤沢さんは他者の心に踏み込んでいながらも、変な図々しさがない。あれだけ魅力的な女性像が立ち上がっているのは上白石さんが演じたからこそですね。
■作品情報『夜明けのすべて』
2月9日(金)全国ロードショー
出演:松村北斗、上白石萌音、渋川清彦、芋生悠、藤間爽子、久保田磨希、足立智充、りょう、光石研
原作:瀬尾まいこ『夜明けのすべて』(水鈴社/文春文庫 刊)
監督:三宅唱
脚本:和田清人、三宅唱
©瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会
公式サイト:https://yoakenosubete-movie.asmik-ace.co.jp/
公式X:https://twitter.com/yoakenosubete