【漫画】“クソ上司”を懲らしめるならヴィジュアル系バンドが最適? シーンへの愛が爆発した痛快SNS漫画
『ヴィジュアル系バンドに出会ってクソ上司をクビにする話』を読む
ヴィジュアル系の描かれ方に違和感
――『ヴィジュアル系バンドに出会ってクソ上司をクビにする話』を制作した経緯を教えてください。
石黒:もともと2023年秋ごろに実施された漫画編集者とのマッチングイベントに出す予定で描きました。「ヴィジュアル系を題材にしよう」と思った背景として、ヴィジュアル系を扱った漫画を目にする機会が増えたもののイロモノとして描かれるケースが多かったからです。
――どのような描かれ方が多いと感じましたか?
石黒:「ナヨナヨした男性が化粧して厨二病っぽいことを歌っている」というような、面白おかしく描かれている印象でした。もちろん、そこもヴィジュアル系の良さだとは思っているのですが。そこで「もう自分で描くわ!」「自分のほうがもっと魅力的にカッコ良く描けるもん!」という過剰な自意識が爆発しました。とはいえ、今思えば反省点が多い作品です。精進せねば……。
――ちなみに笑川は実在するヴィジュアル系バンドをモデルにしているのですか?
石黒:ビジュアルはNIGAIというバンドのボーカル・志輝さんです。キャラデザ中にYouTubeを流していた時、NIGAIの「棘」という曲のMVが流れてきてピンときました。バンド自体のモデルはいませんが、高田馬場AREA(※すでに閉店した老舗のライブハウス)や池袋EDGE(こちらも実在するライブハウス)に出演していそうなバンドをイメージしています。
――ハラスメント課長は、かなり酷い言葉を口にしていました。
石黒:単純な私の口の悪さの影響です(笑)。担当編集さんと打ち合わせをする際は、「このキャラはメス落ちですよね」「結局ヤりたいだけじゃないですか」など少々荒い言葉をよく口にします。こういったオブラートに包まない表現を言葉にすることで、正直な作品作りに繋がるヒントが隠れていると考えています。そこに気付かせてくれた担当編集さんには感謝です。
止まらないヴィジュアル系愛
――ライブシーンは見開きカットが入るなど、熱量を感じらられるシーンの連続でした。
石黒:ライブシーンは体調とテンションが良い時にノリノリで描きました。楽しさの中にも真剣さが入っている表情を表現できるように頑張って描きました。また、見開きカットはもともと入れる予定ではなかったのですが、「ヴィジュアル系の音や熱量を表現したい」ということで急遽追加しました。明朝体で「罪」や「罰」と書くことは、バンドのチラシでもよく見かける好きな表現だったのでそれも詰め込みました。自分の強みが1枚絵ということは知っていたのでそれを活かせて良かったです。先ほど話したマッチングイベントでもそこを褒めてくれる編集者さんが多くて嬉しかったです。
―― 改めてになりますが、石黒さんが考えるヴィジュアル系バンドの魅力を教えてください。
石黒:怒りだけではなく悲しみや弱みも表現して良いところです。オラオラした怒っている曲が来たかと思えば、今度は「俺は弱虫でクズで何もできなくて人生辛いよ~」みたいな歌もあります。「どっちだよ!」という感じですが、どちらの感情も正直に音や歌詞するそんなところが好きです。私は特にそうですが、落ち込んでいる時に「元気出せよ!」と言われても元気は出ません。ただ、ヴィジュアル系は「元気出せよ!」の前に「分かる~死にたいわ~金も無いわ~酒とタバコは呑む~」みたいな隣で一緒にダメになってくれます。落ち込んでから元気を出す、という順番はとても大切であり、そこは一番ヴィジュアル系から授かったものであり、私が漫画を描くうえでの根底のテーマです。
――ヴィジュアル系愛が止まらないですね。
石黒:また。“ヴィジュアル系”という明確な音楽のジャンルはなく、ヒップホップでも演歌でもパンクでもやっている本人が「僕たちヴィジュアル系です」と言えばヴィジュアル系になる、そんな“何を表現しても良い自由さ”も大きな魅力です。
――最後にこれからの目標などは何ですか?
石黒:まず「売れたい!」ということが第一です。その気持ちが先行して去年はSNSでバズる人達を見かけては「いいな~!」って思い、いろいろなことに挑戦したのですがことごとくダメでした。(笑)ただ、おかげで視野も技術も広がり、得手不得手もわかってきました。今描いている次回作から「得意を活かす」で方向に舵を切って制作を進めていきます。また、私事ですが2024年3月1日で活動10周年を迎えるため、それを記念した企画や作品の告知を今年3月1日0時に各SNSで発表する予定です。良かったらフォローをお願いします!「石黒テル密」で検索してアイコンが白塗りだったらそれです!
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