漫画家の“持ち込みボロクソ”問題、人気作家の見解はーー【推しの子】横槍メンゴ氏の優しい視点
自作の漫画を編集者に読んでもらい、講評を受ける「持ち込み」。新たな才能が発見される有力なルートであり、適切なアドバイスを受けて後の活躍につながる漫画家も多い場面だが、そこで受けたショッキングな扱いをまとめたレポート漫画の数々が、X(旧Twitter)上で話題になっている。
作品を過剰なまでに酷評されたというものから、小バカにされたような対応、本気で向き合わず適当に褒められた……というものまで、読んでいるこちらも悲しくなってしまう内容が多い。もちろん、「編集者側の事情」がほぼ描かれていないレポートが大半のため額面通りに受け取れるかどうかはわからないが、漫画家、あるいは漫画化志望のクリエイターからは共感の声が上がっており、少なくとも「ボロクソに言われる」というのは“持ち込みあるある”と言えるようだ。
もちろん、編集者も愛を持って辛辣な意見を言っている、それを跳ね返すメンタルがなければプロとしてやっていけない、といった趣旨の声もある。そんななか、アニメ化で大ブレイクを果たした『【推しの子】』の作画を担当する人気漫画家・横槍メンゴ氏は、「私はボロクソ言われても全く平気だったのであれだけど問題は『ボロクソ言われた時点で辞めてしまう才能人が結構いる』という事実だった」として、「昨今は甘口~辛口の塩梅を事前に選べるようになった!ときいてかなり安心していた」と反応した。
持ち込みボロクソ問題、私はボロクソ言われても全く平気だったのであれだけど問題は「ボロクソ言われた時点で辞めてしまう才能人が結構いる」という事実だったので昨今は甘口~辛口の塩梅を事前に選べるようになった!ときいてかなり安心していたのですがどこもやってる訳じゃないの?😂
— 横槍メンゴ🐰🎀 (@Yorimen) October 20, 2023
例えば、人気マンガアプリ「LINEマンガ」が展開する「マンガ家応援プロジェクト」では、希望者全員の応募作に編集部からの講評が送られるほか、実際にその内容について「甘口か辛口か」のような指定もできる。しかし「腕試し/運試しの気持ちで」というライトなコンテストであり、よりシビアな持ち込みの現場では、いまも意図せず辛口すぎる意見に触れてしまうクリエイターが少なくないようだ。
ちなみに、横槍氏が「ボロカス言われて平気」だったのは、「それでも折れない心!とか、そんなくらいで辞めていては続けられねえ! とかの根性論では全くなく、本当に純粋に精神年齢が子供過ぎて謎の自信に満ち溢れていただけです」としている。そこで「他人の意見にもブレない自信があればいい」と結論づけないのが横槍氏らしいところで、「ネガティブで落ち込みやすかったり、妙に自分や世間を客観視してしまったり、繊細で傷つきやすく少しのことで折れてしまうような人の創作も漏れなく私は大好きなので守られて欲しい~それを見守り育む人々の環境込みで!」と、優しい言葉で締めくくっているのが印象的だ。
「持ち込み」を行う漫画家志望者それぞれに合わせて適切な対応を、というのは編集者の負担が大きく、人を傷つけない「甘口」に偏り過ぎればクリエイターのためにならず……と、考えるほど難しいテーマに思える「持ち込み」の問題。いずれにしても漫画ファンとしては、その場でいい出会いが生まれ、素晴らしい作品が生まれることに期待したいところだ。