赤字幅拡大「ヴィレッジヴァンガード」とは対照的 アニメ人気で業績好調「アニメイト」の戦略を読む

「ヴィレヴァン」「アニメイト」分析

  雑貨店でもあり本屋でもある「ヴィレッジヴァンガード」(以下、ヴィレヴァン)の11月中間決算が営業損失7億4900万円となり、前年同期の1億7600万円の損失から赤字幅が拡大している、というニュースが話題になっている。

 「ヴィレヴァン」は長らくサブカルチャーの聖地といわれ、一般書店では扱わないようなニッチかつマニアックな本の品ぞろえが注目され、業績を伸ばしてきた。経営難はコロナ禍前から何度もささやかれていたが、昨今は多くの識者が指摘するように、サブカルの事実上の終焉による客離れが業績に少なからず影響を及ぼしているうえ、郊外のショッピングモール出店(全国で307店舗(直営303店+FC4店)※2023年5月31日データ)による人件費と家賃の固定費が重くのしかかっていると考えられる。

  一方で、アニメ関連の商材を扱う「アニメイト」の業績は好調だ。池袋の本店を拡張してリニューアルオープンするなど、アニメ業界では独り勝ちのような状況と言っていい。また、日本全国に120店舗以上(※グループ店舗含む 2024年1月現在)があり、ほとんどの県庁所在地に出店。人口規模の大きい地方都市には店舗を構える。イオンモールなどの郊外型ショッピングモールにも店舗が多い。

 「ヴィレヴァン」も「アニメイト」も、扱う商材に様々な差異はあるものの、長らくニッチでマニアックな客を相手にビジネスを展開してきた点は共通している。しかし、「ヴィレヴァン」がサブカルのメインカルチャー化によって衰退したのに対し、「アニメイト」はむしろサブカルのメインカルチャー化によって成長している点が、まったく異なっている。

 「アニメイト」を、地方のオタクの社会インフラと呼んでいる人がいた。「アニメイト」がなければ地方民のヲタ活が成り立たない、という意見も聞く。地方都市の駅前からは次々に新刊書店が消えている。漫画が買えなくなった漫画難民に救いの手を差し伸べてきたのが「アニメイト」であり、閉店した書店のかわりを担っているケースが多い。

  また、2020年に発生したコロナ禍の巣ごもりを経て、漫画・アニメ界隈では『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』『SPY×FAMILY』『【押しの子】』などのメガヒットが連発。アニメはマニアックなものではなく、ライトな一般層にも広く享受されるものになった。アニメイトはもともと独自開発のグッズに力を入れていたが、昨今の推し活需要の高まりや、限定特典の充実も売上に寄与した要因であろう。

  また、「アニメイト」は目当てのタイトルのグッズを指名買いする客が多いといわれ、それゆえ通販との親和性が高い。通販サイトの充実ぶりは大きく、コロナ禍の巣ごもり、自粛期間のダメージを回復するのも早かったとみられる。

  対する、「ヴィレヴァン」はかつての「ドン・キホーテ」のように迷路のような空間で、宝探しをする感覚でショッピングを楽しむことをウリにしていた。そこに起こったコロナ禍は、独特な雰囲気の店作りにより、客が来店してこそ強みを発揮できる「ヴィレヴァン」にとってダメージは大きかったのだろう。

 「ヴィレヴァン」にフラッと来店し、作者名も知らないけれど気になる本を見つけ、買い求めた客も多いのではないか。使い方もわからない不思議な雑貨を見つけ、レジに持って行った経験をもつ人もいるだろう。「ヴィレヴァン」はそういった買い物の楽しみを満喫できる場であったが、そうした買い物のスタイルはコロナ禍を経て徐々に失われつつある。

 2000年代はオタクの象徴的に扱われていたアニメやサブカル文化も、いまや幅広い層が楽しむ文化になった。推し活という言葉の登場で、堂々と好きなキャラ名などを公言できるようになった一方で、オタクのライト化が進んでいるという意見は多い。「ヴィレヴァン」と「アニメイト」が明暗を分けつつあるのは、文化に対する意識の変化も無縁ではないと思われる。

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