Re:ゼロ、よう実、たんもし……ヒット作が続々誕生! MF文庫JがKADOKAWAラノベの頂点に立てた理由

MF文庫JがKADOKAWAラノベのトップに

 『このラノ』初登場が第4位だった『たんもし』に負けないスタートダッシュを切ったのが、『このライトノベルがすごい!2024』で第2位となった鵜飼有志『死亡遊戯で飯を食う。』だ。金持ちたちが新しいショービジネスとして密かに立ち上げたのは、少女たちが大金を目的に命をかけて戦う様に賭けるというデスゲーム。幽鬼という名の少女はそのゲームへの参加者のひとりで、閉じ込められた館で仕掛けられた罠をくぐり抜けて脱出を目指すゲームに挑み、捕まれば殺される鬼ごっこで逃げ切ろうとあがく。

 KADOKAWAなら角川ホラー文庫の方が相応しそうな設定だが、血や内蔵が飛び散るようなスプラッタ描写を抑えてゲーム感を出し、幽鬼を始め参加する少女たちのキャラクター性を増して因縁めいたものを仕込むことで、感情を乗せて続きを読んでいきたいと思わせる。ねこめたるが描く幽鬼をはじめとした少女たちの愛らしさも、内容の陰惨さを覆って目を引きつける。TVアニメ化が決まれば、そちらから入る人に驚きを与えそうだ。

 MF文庫Jの覇権は続くのか。2022年のトップではあったものの2023年については確定しておらず、アニメ化が決まった燦々SUN『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』を持ち、谷川流の『涼宮ハルヒの劇場』が制作中というスニーカー文庫の巻き返しがあったり、やはりTVアニメ化決定の菊石まれほ『ユア・フォルマ』を刊行している電撃文庫が、創刊30周年を迎えて心機一転とばかりに大技を繰り出してきたりするかもしれない。

 受けるMF文庫Jも、11月に刊行の眞田天佑『多元宇宙的青春の破れ、唯一の君がいる扉』で平行世界というガチSF設定で恋愛要素も絡めたスリリングな物語を繰りだし、詐欺師の男と異能力者の少女がバディを組んで相手を欺し、戦いながら冒険を繰り広げる滝浪酒利『マスカレード・コンフィデンス 詐欺師は少女と仮面仕掛けの旅をする』で読み応えのある物語世界を見せている。

 『このラノ!2024』で6位の林星悟『ステラ・ステップ』もアイドル×SFという、往年のライトノベル好きが好んだ設定を令和の時代に再生させ、女の子どうしの関係も描いて読ませてくれる。19位の三河ごーすと『義妹生活』のような安定株も引き続きもり立てていくことで、数あるライトノベルレーベルの中で緑の背表紙の存在感を見せ続けそうだ。

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