子安武人・光樹の親子共演でも話題! 『暴食のベルセルク』が描く、苦悩しながら生きる意味

『暴食のベルセルク』人気のポイントは?

 荒川弘の『鋼の錬金術師』では何でも食べるホムンクルスのグラトニー、鈴木央の『七つの大罪』では妖艶な美女の姿をしたマーリンが担っていたのが、7つある人間の大罪のひとつである「暴食」だ。一色一凛『暴食のベルセルク~俺だけレベルという概念を突破する~』(GCノベルズ刊、文庫版は『暴食のベルセルク~俺だけレベルという概念を突破して最強~』)にも「暴食」という特質を持った主人公が登場。グラトニーやマーリンに負けない貪欲さで、最底辺から成り上がっていく下剋上ストーリーを見せてくれる。

 10月からスタートしたTVアニメ版では、逢坂良太が主人公で武人のフェイトを演じ、彼の相棒となるグリードという名の剣の役で関智一が出演して、良い声による心地よい掛け合いを聞かせてくれている『暴食のベルセルク』。第7話では、『ジョジョの奇妙な冒険』のDIOであり『呪術廻戦』では伏黒甚爾を演じた子安武人が、息子の子安光樹と役の上でも親子として共演して話題になった。

 1990年代後半から美形の美声を演じ続けてきた子安武人が、アーロンという名の老剣士を演じて渋さを出せば、若い子安光樹が父を敬愛しながら悲劇的な運命をたどった息子のルークをはつらつとした声で演じて、将来を期待させた。

 ルークはここでお役御免となるが、アーロンは主人公のフェイトや彼が敬愛する聖騎士のロキシーの成長に重要な役割を果たす。そして、TVアニメでこれから展開される強大な敵を相手にした戦いの中で、アーロンの教えが成果となって現れてくる。そう聞けば、通りすがりに出会ったようにしか見えないアーロンというキャラクターに、大ベテランの子安武人が起用された意味も分かるだろう。

 逢坂良太も負けてはいない。悲惨な境遇に置かれていた少年が、持っていた能力に目覚めることで強さを得て、悲惨な境遇を抜け出し、敬愛する人を守ってあげられる存在になっていく。そんなストーリーの中で苦悩しながら成長していく主人公のフェイトを演じきっている。

 スキルが優劣を決める風潮がある世界で、フェイトが生まれながらに持っていたスキルは、《暴食》というただお腹がすくだけのものだった。何の役にも立たないため、両親を亡くした後、住んでいた村から穀潰しとして疎まれ、追い出されたフェイトは、王都で門番の仕事をしてどうにか飢えを凌いでいた。

 そんなある日、聖騎士という地位にありながらも威張ることがなく、民から慕われているロキシーという女性の聖騎士といっしょに門番の任につくことになったフェイトの前に、城に忍び込もうとして逃げてきた盗賊が現れた。手負いだったためフェイトでもとどめを刺すことができたが、その瞬間、ただ腹が減るだけだと思われていた《暴食》のスキルが、倒した相手のスキルやステータスを喰らうという、とてつもない能力だったことが判明した。

 フェイトは、自分の境遇を気にかけてくれたロキシーの家に使用人として雇われつつ、こっそりと街の外に出て魔物を狩って、スキルやステータスを獲得していこうと考える。まずは武器でも揃えようと入った店で、(俺様を買え)と呼びかけてきたグリードというらしい片手剣を買い、魔物狩りへと出かけてゴブリンなどを倒しながらだんだんと強くなっていく。

 倒した分だけ強くなれるというと、一見嬉しい能力に見えるけれど、食べれば食べるほどもっと食べたいと思うようになって、永遠に戦い続けなくてはならなくなると聞くと、結構厄介な能力だったと分かるだろう。敬愛するロキシーの家で雇われても、その立場に甘んじていればいずれ飢餓感が暴走して、ロキシーを傷つけてしまうかもしれない。こっそり魔物を狩って飢餓感を満たしても、より強い敵を求めるようになって隠してはいられなくなる。

 だからといって正体を明かせば、ロキシーに迷惑がかかるかもしれない。最強になれる能力を得ながら、安定した暮らしを捨てて戦い続けなくてはらない境遇は果たして幸福か? 迷うところだが、それでも、誰からも虐げられることなく自分の力で金を稼ぎ、自分の意思で進む道を決められるのなら、そちらを選ぶべきだろう。

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