声優・悠木碧「ずっと人間に興味があった」 初のエッセイ集『悠木碧のつくりかた』インタビュー
仕事のために無理に好きになることは絶対にしない
――トークイベントでは「自分の好きには噓がつけない」ともおっしゃっていましたね。悠木:好きを仕事にしたがゆえの難しいところです。でも始めたものはしょうがないので、ポジティブに楽しんでいけたらと思っています。「好きだからこそ仕事がもらえている」というのは、第一に考えなきゃいけないポイントですけれど、仕事のために無理に好きになることは絶対にしないようにと心がけています。
――早見沙織さん、寿美菜子さんとの鼎談も掲載されていますが、今後対談したい方はいらっしゃいますか?
悠木:ここまで母のことを書いたので、「母との対談もいいよね」という話は一回出ました。また、沢城みゆきさんとお話をするのは恐れ多いですけれど、してみたかったなという気持ちはあります。でもやっぱり、美菜子とみさお(早見)と話している時が、一番自分らしく格好つけずに話せるんですよね。美菜子とみさおは、仕事もプライベートも共有している絶妙な人間関係で、彼女たちとでしか成立しないバランスが実にありがたいです。「ずっ友だよ!」って言っています(笑)。
――対談相手として、悠木さんが愛する『機動戦士ガンダムOO』でロックオン・ストラトスを演じ、シンフォギアなどでも共演している、三木眞一郎さんはいかがですか?
悠木:そんなピンポイントで(笑)。でもそうなると、私はただのファンになってしまうので、「ああ、そうなんですね!」「推せます!」と、一方的に聞くだけになってしまうと思います。ただ三木さんと初めて現場でご一緒させていただいた時は、恐れ多すぎて、自分から『OO』を観ていたことを言うことができなかったんですけど、各所で私の人生を変えたのが『OO』だったと話していたものですから、耳に入っていたようです。三木さんから「『OO』が好きだったんでしょ」と言ってくださって、いかに好きかをご本人に聞いていただいたことがあります。こんなに幸せなファンは、他にはいないだろうと思いました。
――三木さんは、どんな反応を?
悠木:三木さんご自身も『OO』で描いていた内容に対して、本当にいろいろなお考えを持っていらっしゃって。「たくさん考えてたくさん哲学して、何が正しいのか問答しながら、みんなで作った作品だから、それが後輩を育てたのが本当にうれしい」とおっしゃってくださいました。私はもう号泣で、みんながいるのにオイオイ泣いちゃって、同輩たちにヨシヨシってされて、今思うとすごく恥ずかしいです。でも、あの時はすごく興奮しましたし、その後私も『機動戦士ガンダム 水星の魔女』でガンダムのパイロットを演じることができました。私の演じたキャラクターは死んじゃうんですけれど、その子の命によって『水星の魔女』を観た人たちに、きっと何かが伝わったはずだし、いろいろなものを残せたと思っています。『OO』からもらったものを、ガンダムシリーズで返せたと思ったら、その系譜がすごくうれしくて。ガンダムに乗らせてもらえてありがたかったです。
――バトンがつながっているわけですね。
悠木:はい。『水星の魔女』を観て私の芝居が届いた人は、ぜひ次につないでほしいです。たとえそれがアニメじゃなくても、人の心に何かを残そうと思ってもらえたら、こんなに素敵なことはないと思います。
■書籍情報
『悠木碧のつくりかた』
著者:悠木碧
価格:1,870円
発売日:9月21日
出版社:中央公論新社