【漫画】異世界ではなく学校のウサギ小屋に転生したオジサン、いじめをどう解決? バカバカしくも痛快なSNS漫画

商業誌でボツになった作品だった

――なぜ『ウサギ小屋のオジサン』を制作しようと思ったのですか?

macoso:実のところ、本作は商業誌の編集さんに見せ、あっさりボツを喰らったネームでした。ここ最近ネーム制作ばかりですっかり原稿制作をやっておらず、私自身ペン入れ作業が一番好きなので少々手が空いていた時期だったというのもあって練習を兼ねて原稿化しました。

――どのような感じでボツにされたのですか?

macoso:ふと本作のストーリーが思いついて、仕事の合間に制作して「ついでにこんなのも描いたので見てください」とパッと描いてパッと送ってパッと玉砕した感じです。「面白いけど少年誌向けじゃない(笑)」って言われました。正直「いやまぁそうだよな」と自分でも思ったのですが、テンション的に気に入っていたストーリーだったので、またページ数も合間に描くには丁度良い文量だったので原稿化に踏み切りました。

――“ウサギ小屋に住んでいる謎のオジサン”がメインになった経緯は?

macoso:日常のような、非日常のような、そんな話を描こうと思ったからです。「俺はウサギなんだ」と言い張る変なオジサンがいて、なぜか自分以外の人間もオジサンのことはただのウサギだと思い込んでいる。ただ、僕にはどう見てもただの変なオジサンにしか見えない、というふざけた話を描こうと思いました。

――オジサンというキャラはどのように練り上げましたか?

macoso:平成を謳歌した、過去の“やらかし”なんかも武勇伝にするめんどくさいオジサンを描こうと思いました。「ただ単純に気持ち悪い」というよりは、そんな鬱陶しさもちょっと可愛らしく見える“おじさん構文”を擬人化したようなキャラを目指しました。

「シリアスな部分がなくて申し訳ない」

――ギャグとシリアスが入り混じりながらの会話劇でしたが、ギャグとシリアスのバランスはどのように調整しましたか?

macoso:結構ノリと勢いだけで描いてしまったので、バランスなど難しいことは特に考えませんでした。そもそも、自分的には「全編通してコメディ一色になっており、シリアスな部分がなくて申し訳ない」と思っていたくらいです。

――ただ、「人は既に他人が評価してるモノしか評価したくない人のほうが大半だからねぇ」など、オジサンが話すシリアスなセリフには重みがありました。

macoso:これらのセリフは、自分が創作を始めてから何となく心に溜めていた不満みたいなものをオジサンに代弁してもらった感じです。私はとてもネガティブな思考のなのですが、自分と同じようなことを考えてる人がいたとして、「それをサラッと言ってくれる人がいたら、読んだ人のうちほんの1人でも2人でもスッキリしてくれるだろう」と思ってセリフを選びました。

――オジサンが土下座している隙に煙草を仕込むという不意打ちで不良を撃退しました。

macoso:ちょっとカッコ悪いのですが、単純に私自身が暴力を描くということに躊躇いがあったことが大きいです。オジサンはケンカもめちゃくちゃ弱く、金遣いも荒い、正義感も欠落してる、“良いところが何もないクズ”にしようと思っていました。ですので、クズらしい解決方法、というところであの解決策を選びました。

――不良を撃退してこれまで通りの日常を工藤が取り戻す、というハッピーエンドに見えました。しかし、「状況が変われば平気で裏切る」という人たちと工藤が今後一緒にいることを考えると、モヤモヤしてしまうラストにもなっていました。

macoso:それを突かれるととても痛いところなのです(笑)。ただ、「とりあえず読み切りで解決されたところまで描こう」という思いからこのようなラストにしました。私は割と作風が現代の現実社会を舞台にした作品が多く、『城の魚』『アメノトリ』では“リアルに描けるところはできるだけリアル”というスタンスで制作します。ただ、本作は「そういう生真面目さををいったん0にして、思うままに描いちゃったらいいじゃん!」とおおらかな気持ちで描きました。

――最後に今後の漫画制作における目標など教えてください。

macoso:「もう描くの嫌だ」と思うまでは漫画を描いていきたいです。今は漫画を描くことがすごく楽しく、「ポッキリ心が折れるまでは挑戦し続けたい」と思っています。編集担当さん、今後もお手柔らかに…やっぱりこれまで通り手厳しくお願いします!(笑)

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