押見修造『おかえりアリス』完結へーー少年たちが向き合う「男らしさ」と「性欲」という難題
最終巻となる第7巻では、男や女といった枠組みの外に出たいと願う洋平が、幼少期を思い出して慧と抱き合うことで、二人の心と体が結ばれる。そして、これまでとは別のやり方で「二人の体を作り直そう」と決意する姿が描かれた。
性欲に翻弄される洋平が苦しんでいた6巻までの生々しさに比べると、最終巻で描かれた結末は観念的すぎて、気持ちが離れてしまった。
重いテーマを扱った作品だったため、救いを描きたかったという気持ちはわからないでもないが、うまく消化できていないように感じた。
おそらく作者もそのことに自覚的なのだろう。
本編で描けなかった部分を補完するかのように『おかえりアリス』の全巻には、あとがきが掲載されている。
あとがきはまるで私小説のようで、幼少期から大人に成長していく中で「男らしさ」と「性欲」について押見がどのように感じてきたかについて、赤裸々に書いている。
このあとがきを読むと『おかえりアリス』のテーマが押見にとって、とても切実なものであると同時に、現在も終わっていない問題であることが理解できる。
「男らしさ」と「性欲」からどうやって降りるかという難題に、押見は次回作でも挑むのだろう。そして今回と同じように心が傷だらけになり、もがき苦しむのだろうが、作者が苦しんでいる姿を見せることは、正しい結論を出すこと以上に意味のある行為ではないかと思う。