『とあるおっさんのVRMMO活動記』から『フルメタル・パニック!』まで、加速する“おっさん萌え”のラノベ人気を考察

ラノベで“おっさん”が活躍中

 もっとも、中には若い世代にもおっさんの活躍ぶりを素直に凄いと思わせるライトノベルもある。津田彷徨によって上下巻で書かれた『プロレス棚橋弘至と! ビジネス木谷高明の!! 異世界タッグ無双!!!』(星海社FICTIONS)だ。タイトルを読めば、新日本プロレスに所属するプロレスラーの棚橋弘至と、その新日本プロレスのオーナーで、「バンドリ!」プロジェクトなどを推進するブシロードを創業した木谷高明が登場する作品だと分かるだるろう。

 その2人が交通事故に巻き込まれ、気がつくと異世界に転移していたというのが本書の設定。転移に際してチート能力が与えられた訳ではないが、そこで棚橋は鍛え挙げたプロレスラーとしての肉体でオークを倒しドラゴンを従え最強伝説を轟かせる。木谷もアイドルをプロデュースしたり、経済的な知識を生かして謀略を見抜いたりして財を成していく。現実世界で成功している2人が知識と経験を活かせば、異世界でも成功間違いなし。そんな展開がおっさん世代の溜飲を下げ、若い世代にはおっさんに学ぶ人生の指南書となっている。

 おっさんになっても失わないかっこよさに胸が熱くなる作品もある。埼玉県の大宮にある一軒家に引っ越してきた小野寺という一家は、母親がいて娘と息子がいて父親がいる4人家族だが、家に招かれた隣人の田中一郎が、出された料理の写真をスマホで撮ると、父親から「変な写真を撮ったら、君を殺さなければならなかった」と言われた。

 何かヤバいことをし来た家族なのか。そう感じた数日後、小野寺の家を武装勢力が襲撃するが、誰も慌てず銃器を取り出し撃退する。そしてどこかに引っ越していく別れ際、娘は一郎に自分たちの本当の名字が「相良」であることを告げる。もうお分かりだろう。賀東招二の超人気シリーズ『フルメタル・パニック!』で世界を改変しようとする勢力と戦った相良宗介が、千鳥かなめと結婚し2人の子供とともに戻って来た。

 「ドラゴンマガジン」の2023年9月号から始まった『フルメタル・パニック!Family』は、続く11月号で舞台を豊洲のマンションに移し、同じように伝説の傭兵を倒して名を上げようとする武装勢力の襲撃を受けては、あっさりと撃退してのける。

 人類の運命がかかった戦いではないが、それに負けないくらい大切な家族のために戦う相良宗介は、おっさんとなってもやはり強くてカッコ良い。就職したファミレスで入って来た強盗を一瞬で撃退するなど腕はまったく衰えていない。それでいて世間の常識をズレた言動を見せて一般人から怪しまれるところも以前と同じ。そんな宗介が結婚相手のかなめや娘の夏美、息子の安斗を守って戦うファミリー戦記が続いていくのか、それも強大な敵を相手にするようになるのか。その活躍次第で“おっさん萌え”するラノベ人気は、一段の盛り上がりを見せそうだ。

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