マツコ・デラックスを見出した、中村うさぎ「ガラパゴス諸島で珍獣見つけた感じ」今だから話せる稀有な“才能”と“笑撃”エピソード
作家の中村うさぎといえば、自身の買い物依存症から美容整形、ホストクラブ、そして風俗……と、あらゆる実体験をもとに執筆したエッセイでヒットを連発した、稀有なエッセイストとして名高い。中村は独自の審美眼を活かした人材発掘にも長けており、なかでもマツコ・デラックスを芸能界へと導いた功績は大きい。
中村は一般には無名だったマツコに本を書くことをすすめ、自身との対談の企画を設けて世間に露出する機会を増やした。一連の行動を一言で言うなら、中村流の“推し活”なのだという。マツコのユニークなキャラをみんなに広めたい、みんなにもっと知って欲しい―― そんな一途で純粋な思いだったそうだ。中村に、今だから話せるマツコへの思いを存分に語っていただいた。
マツコ・デラックスとの出会い
――中村うさぎ先生とマツコ・デラックスさんは、どのように出会われたのでしょうか。
中村:マツコは20代の頃、ゲイ雑誌「Bʌ́di(バディ)」の編集をしていました。私はマツコが書く文章のファンだったので、知り合いの「Bʌ́di(バディ)」の編集者に頼んで会わせてもらったんです。当時のマツコはドラァグクイーンの界隈では有名だったけれど、あくまでその世界の中だけの有名人だったわけで、世間一般では知られていなかったんですよ。
――中村先生がマツコさんに惹き込まれたポイントは何だったのでしょうか。
中村:何といってもあの体型とキャラだよね。稀有なものだったと思うよ。だって、マツコが「私、太ったのよ」とか言っても、何も変わんないじゃん! デブがちょっと太っても、10kg痩せても、同じデブじゃん! と思うよね(笑)。
――中村先生は、そんなマツコさんの魅力をたくさんの人に知って欲しいと思い、行動を起こされたわけですね。
中村:私が小学館で出した『人生張ってます-無頼な女たちと語る』の対談相手の一人に、マツコを指名しました。編集部は誰もマツコなんて知らなかったけれど(笑)、とにかく面白い人だから入れたいと言ったの。戸惑ったのはマツコだよね。「私でいいの?」とか言っていたけれど、私は「いつもの調子で話せば面白いから大丈夫よ」なんて言ってさ。それがメディアに引っ張り出した最初だったかな。
――マツコさんが本を出されたのも、中村先生の尽力があったと伺っています。
中村:マツコにエッセイを書けと言ったのは私です。マツコは「Bʌ́di(バディ)」でちょこちょこ文章を書いていたんだけど、書いたものが本当に面白かったんですよ。マツコのテレビ番組を見てみんなが感じていることだと思うけれど、当時からモノの見方や切り口が面白いと思ったわけ。そして、あの体形でしょ。それを活かすために、写真とエッセイで構成された本を提案したんです。こうして2002年に、『アタシがマツコ・デラックス!』が出ました。これがマツコにとって最初の一冊ですね。