倉田真由美 、介護芸人・さかまき。による原作を漫画化した理由「高齢者をここまでリアルに面白く描いているものはない」
『だめんずうぉ~か~』などの実録エッセイ漫画で知られる倉田真由美が、初となる原作付きの漫画を「WEBザテレビジョン」で連載開始した。タイトルは『お尻ふきます!!』。“介護芸人”として知られるマッハスピード豪速球のさかまき。の原作をベースに、介護の世界のリアルを描いた漫画である。倉田にとっても意欲作である本作に込めた想いを聞いた。
倉田真由美初、原作付きの漫画
――ひょんなことからグループホームで働くことになった早乙女ウメを主人公に、介護の現場を描いた漫画です。どのような経緯で連載が決まったのでしょうか。
倉田:『お尻ふきます!!』はさかまき。さんの原作をそのまま漫画化する構想もあったんだけど、どうしても描けない話題も出てくるので、キャラをゼロから作ってフィクションとして描くことになりました。でも、内容はさかまき。さんの実体験が豊富に入っています。だから、フィクションなんだけれど、限りなくノンフィクションの要素が強い漫画じゃないかなと思います。
――倉田先生にとって初めての原作付きの漫画ですが、シナリオはどのような形で提供されているのでしょうか。
倉田:実はさかまき。さんは絵心がある人で、漫画のネームは彼が切っているんです。今まで漫画を描いたことがなかったそうなんですが、ネームの段階で既に面白いので、私は若干のセリフの調整しかしていないんです。あと、ネームが上がってくるまで、敢えて次の展開を知らせてもらっていません。だから、私自身どんな人が出てきて、どんな話になるのかなと楽しみにしています。
――ええっ! さかまき。さん、漫画初挑戦でネームが切れるんですか!? それは凄い!
倉田:早乙女ウメを高卒の元ギャルでキャバ嬢経験者にしようとか、設定もさかまき。さんが考えたんです。漫画の才能があるのはもちろんだけど、彼が介護人生で見聞きしたリアルな人間ドラマが余すところなく入っているので、純粋に面白いんですよ。それに介護の世界は専門的だから、経験者じゃないとネームは描けないと思います。
――ここは、一朝一夕で描けるものではないと。
倉田:私も認知症の父を介護したことはあるけれど、それこそ介護職の人は桁が違うほどたくさんの人を介護しているわけです。認知症の症例だって100人いれば100通りのパターンがあるわけですからね。
――認知症のエピソードは第1話でさっそく登場しますよね。ウメが実家に帰ったら祖父が認知症になり、要介護2に認定されていました。
倉田:認知症になったウメのおじいちゃんの源五郎は、突然玄関で「船はまだですか?」と言う。ウメは、最初は何のことかわからずに戸惑っていたけれど、ホームヘルパーさんはウメも知らなかった源五郎の過去を語ります。かつて源五郎は港で仕事をしていて、玄関に行くと、港で働いていた頃を思い出すそうなのです。ホームヘルパーさんは人の人生が見える介護の仕事は楽しい、と言います。これは秀逸なお話ですよね。
――1人の男の人生が、介護を通して見えてくるわけですね。
倉田:介護は大変ですが、一方でこういうほんのりといい話もあるんですよ。こういったリアルなエピソードはさかまき。さんだからこそ表現できると感じます。