肩身の狭い愛煙家たちのヒューマンドラマが100万部突破! 注目の漫画『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』
2018年に健康増進法が改正され、受動喫煙防止対策はいわばマナーからルールとなった。それに伴い街中の喫煙所は減少の一途を辿り、以前にも増して喫煙者たちの肩身は狭くなっている。『月刊ビッグガンガン』(スクエア・エニックス)で連載中の地主による『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』(以下、『ヤニすう』)は、そんな肩身が狭くなった愛煙家たちが織り成すホッコリとしたヒューマンドラマが展開される。
くたびれた中年男性の佐々木にとっての至福の時間、それは煙草と行きつけのスーパーSで働く女性店員 山田のレジ対応。山田の笑顔や健気な仕事ぶりから日々元気を貰っていた佐々木は、ある日“田山”と名乗る女性にスーパーの裏手にある従業員用の喫煙場所へと誘われる。ジト目でロック系の服装を身に纏う田山の正体は山田。レジに立つ際の爽やかな笑顔や服装はあくまでも店員としての姿。田山と山田が同一人物であることに気が付かない佐々木をからかうために、山田は正体を隠し続ける...…。
本作品のメインとなるのは佐々木と山田(田山)の喫煙所を舞台に交わされるコミュニケーションの数々。鈍感で会社でも上司に叱責されてばかりだが、人のことを思いやる優しさを持つ佐々木。イタズラで人をからかうが、人一倍の責任感と他者への愛情を持っている山田。からかったりからかわれたり、悩みを打ち明け合ったり、時にはプレゼントや手紙を贈り合ったり。ゆっくりと仲を深める佐々木と山田の関係は、友人とも知り合いとも恋仲とも呼べそうで呼べないもどかしさと愛おしさに満ちている。
私がオススメしたいのは第2巻収録のエピソード。佐々木からプレゼントされた携帯灰皿を愛用する山田だったが、ある日その携帯灰皿を紛失してしまう。スーパーの周辺を探し回る山田であったが……。佐々木らしい素朴だけどあたたかい優しさと、山田の強い責任感と佐々木への愛情を感じさせるエピソードは、メインキャラクターふたりそれぞれのらしさをじっくりと楽しむことが出来る。