『美味しんぼ』栗田ゆう子は、なぜ山岡士郎と結婚した? 団社長、近城カメラマン……恋のライバルたちから考察

山岡士郎の常連店、料理の値段は?

  グルメ漫画の草分け的存在として高い人気を誇る『美味しんぼ』。料理はもちろんだが、栗田ゆう子と山岡士郎、団社長、近城カメラマン、二木まり子を巻き込んだ恋愛物語も見どころの1つになっていた。

  栗田は大富豪の団社長と売れっ子カメラマンの近城から結婚を申し込まれるが、最終的に思いを馳せていた山岡と結婚する。多くの読者から見ると「ハッピーエンド」だったようだが、なぜ栗田は山岡の選んだのだろうか? 経済的側面である年収などから検証してみたい。

団社長

  IT関連企業の創設者として登場した団社長。究極対至高の事実上主催者となっていた「週刊タイム」を運営する大研社を買い取り、栗田を自分の妻とするべく、傍から見ると仲睦まじい山岡と栗田の仲を引き裂こうと暗躍した。

  団社長はもともと両親と死別し、施設で妹と育った苦労人。コンピューター事業で巨万の富を築いたが、実家が銀行頭取でお嬢様の二木まり子に「成り上がり」と馬鹿にされることもあった。

  また、「金さえあれば何でも動かせる」と思っている節があるようで、栗田が入院した際にはフランス料理店をまるごと呼び、山でノビルを取ってきた山岡に敗北し、病室を飛び出す。団社長なりに心をこめたのだが、栗田は気遣う山岡に「いいのよ」と声をかけ、団社長を放置していた。それでも想いを捨てない心は、本物であろう。

  団社長の年収は不明だが、二木まり子が「億万長者」と発言していることから、1~3億程度の収入を得ているものと見られる。仮に結婚すれば、何不自由ない生活を送ることができたはずだ。

  一方で革新が早いIT企業とWeb媒体に押され気味である紙メディアの社長ということを考えると、将来的には厳しい経済状態になる可能性がある。また栗田と山岡を引き裂こうと暗躍する小狡さや「人の心が理解できない」こと、大金持ちであることから不倫の可能性があることなどがマイナスポイントだったのだろう。

近城カメラマン

  山岡士郎との結婚を目論む二木まり子が企画した雑誌東西グラフ「世界味めぐり」のカメラマン、近城。フォトスタジオを主宰し、売れっ子であること、写真嫌いの海原雄山が腕を認め専属カメラマンとしていることは語られていたものの、具体的にどのような仕事をしてきたなどの情報はあまり明らかになっていなかった。

  前職場を喧嘩でクビになる、帝都新聞にくってかかるなど、一匹狼的な一面も持っていた近城も栗田に想いを寄せた1人。ただしなにかと山岡と栗田を引き離そうと暗躍する団社長とは異なり、山岡と親友になったうえで「栗田さんの結婚したい」と宣言し、一時は山岡から「協力する」と言われたこともあった。

  近城の年収は不明だが、有名雑誌を担当したうえ、海原雄山の専属カメラマンとなっていることを考えると、900~1000万近くの収入が予想される。彼は栗田に振られた後、二都銀行頭取の娘、二木まり子と結婚。逆玉にのっている。

  個人でカメラマン業を営む近城は「安定している」とは言い難い。また、栗田の結婚後、元彼女から女遊びにふけっていた過去をバラされたこともある。そのあたりが、栗田を射止められなかった要因か。

山岡士郎

  栗田を射止めた山岡。当初はグータラで汚く、雑巾で顔を拭いてしまうような男で、栗田も嫌っている様子だったが、山岡が次々と政財界の大物に喧嘩を売り、料理で懐柔し味方につけていくと、栗田は山岡への好意を表に出すようになった。一方山岡は栗田と腕を組んで歩く、業務外でもイチャイチャするなどしていたものの、直接的に栗田に思いを語ることは、プロポーズ直前までなかった。

  山岡は東西新聞の平社員で仕事をサボることが多く、富井副部長や三谷(花村)荒川(田畑)から蔑むような発言を受けており、評価が低かった。しかし「究極のメニュー」担当者となったことで地位は上がり、社主直々に指示を受けることも。年収は明かされていないが、一般的な新聞記者の年収を考えると、800万円程度だと思われ、3人のなかでは1番低い可能性が高い。

  団社長や近城カメラマンと比較すると「見劣りする」と話したこともある山岡だが、不仲とはいえ天下の芸術家、海原雄山の息子。銀座の一等地に美食倶楽部を構え、ロールス・ロイスを乗り回す雄山は、政財界の大物から高い料金を取り、陶器や書画もかなり高い金額がつく。その収入と資産は、10億以上ともいわれる。

  そんな偉大な父親の息子である山岡は、団社長と近城を遥かに凌ぐお坊ちゃま。雄山はなんだかんだと言いながらも士郎を気にかけているうえに、泣きつかれると断れない性格で、援助が期待できる。

  また、美食倶楽部の料理人は「士郎様」と呼び、高級料理店のシェフなども山岡に一目置いていており、人間性も抜群だ。そして女性に対して積極的ではなく、浮気の心配もほとんどない。一方、お坊ちゃま育ちであることから、金銭感覚は庶民と逸脱していることや、ギャンブル好きという一面がマイナスポイントとして挙げられる。

山岡を選ぶのは必然だった?

  山岡は喧嘩っ早い一面はあるものの、偉ぶらず、誰にでも分け隔てなく優しい。さらに本人は縁を切ったと話しているもの、心の底では雄山とつながりを持っていることを栗田は肌で感じていたはずで「雄山の遺産」も期待できる。団社長と近城ではなく、栗田が山岡と結婚するのは、当然なのかもしれない。

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