『美味しんぼ』栗田ゆう子は心優しいキャラなのか 海原雄山、山岡士郎をも驚かせた「問題発言」から考える  

グルメ漫画の草分け的存在『美味しんぼ』。物語の中心は料理だが、恋の行方や親子の問題など、楽しませる要素が散りばめられていた。

 なかでも人々に強いインパクトを与えたのが登場人物だろう。海原雄山と山岡士郎という頑固で気が強い親子やトラブルメーカーの富井副部長、業務命令を乱発する大原東西新聞社社主など個性の強い人物が多数登場した。

 登場人物の中で最も評価が分かれているのが、山岡士郎の妻、栗田ゆう子だ。「美味しんぼの良心」という声もある一方で、「雄山や山岡と似て気が強い」という指摘も。以前リアルサウンドブックで「毒舌ぶり」を取り上げたところ、かなり多くの反響があった。そこで今回は栗田ゆう子の「問題発言」を検証してみたい。

「美味しく作ってね」

 山岡や東西新聞社家庭部の星村と冷やし中華が人気の店を訪れた栗田。40分並んで入店すると、店員に冷やし中華を注文する。

 店員が「冷やし中華ですか?」と確認すると、栗田は笑顔で「ええ、3人とも。美味しく作ってね」とリクエスト。これに店員は「変なこと言わないでくれよ、うちはいつでも美味しいよ。だからこんなに大勢のお客さんが来てくれるんだ」と激怒した。

 栗田は「お愛想のつもりで言ったのに」と憤慨し、星村や山岡も激怒していたが、一部読者からは「栗田が失礼では?」「美味しく作っては明らかに余計な発言」という声も。彼女の優しさが物議を醸してしまった。

「デートなんかじゃないわ! お食事を一緒にするだけよ!」

 至高との「鮭料理対決」に向けて頭を悩ませていた山岡。それをよそに栗田は団社長とデートを重ね親密になっており、団社長から文化部に花が贈られてくる。栗田は好きなはずの山岡を尻目に会社の電話で堂々とニコニコしながらお礼をしたうえ、夜のデートを約束した。

 贈られてきた花からヒントを得て、就業後料亭・岡星に向かう山岡。すると栗田が呼び止め、自分に相談がないことに激怒する。山岡は素直に「荒川から君のデートの邪魔をするなって(言われた)」と理由を説明するが、栗田はなぜか怒りが頂点に達し「デートじゃないわ。お食事を一緒にするだけよ」と怒鳴り散らした。

 ピュアな山岡が「それをデートっていうんじゃないの?」とツッコミを入れると、栗田は到着した団社長の車を見て「大事な仕事を前にして私をのけ者にして私なんか必要じゃないのね」とつぶやき、「私、行きます!」とデートに出かけてしまった。

 山岡が栗田を岡星に誘わなかったのは荒川に「デートを邪魔するな」と吹き込まれていたからであることは明らか。しかもそのことを説明しているにもかかわらず、「のけ者にしている」と激怒し、デートに向かった栗田。山岡がかわいそうに思えてしまう読者も、いたようだ。

海原雄山に「子供は作りません、海原さんの性格が隔世遺伝で出たら大変なので」

 東西新聞大原社主と帝都新聞嶺山社長の喧嘩に乗じて山岡と雄山の仲直りを目論んだ栗田は美食倶楽部を訪れ雄山に「なんとかしてほしい」と頼む。

 雄山はこの頼みを断固拒否し、「親子の縁を切ってある。知ったことか」と吐き捨てると、栗田は逆上し、「今年は赤ちゃんを作ろうと思っていましたが、私はもう子供は作りません」と発言し、同席したおチヨを驚かせる。

 さらに「山岡さんは素晴らしい人ですが、海原さんの血を引いている。冷酷で思いやりがなくて身勝手でわがままで愛情のかけらもない。そんな海原さんの性格が隔世遺伝で出たら大変なので」と発言し、雄山から美食倶楽部を出るよう命じられた。

 結局山岡の間接的なとりなしや度量の広い雄山が失礼な言動を許し、事なきを得たが、絶縁となってもおかしくない暴言スレスレの過激発言だった。

 穏やかで優しいイメージの強い栗田だが、時折山岡や雄山をも超える過激な言動を見せる。怒らせてはいけない人物なのかもしれない。

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