『美味しんぼ』最も謎が多いキャラ、京極万太郎のミステリアスなエピソード3選

 美味しんぼの登場人物で、最も謎が多いといっても過言ではないのが、京極万太郎だ。

 京極は第1巻で「京都の億万長者」として登場。東西新聞社が京極の所有するルノワールを借りるため、料亭「花川」で接待することになったことがきっかけだった。

 当時の京極は初対面の栗田ゆう子が「いかにも億万長者という感じ」と心のなかでつぶやくほど、尊大な態度をとる。山岡も花川の料理がまずいと暴れる京極に「ケツのあの小さいじいさんだ」と啖呵を切っていた。

 山岡から「岡星」を紹介された際にも京極は「なんや、ちっぽけな店やな。こんなところでうまいもんが食えるんかいな」とイヤミを言っている。しかし料理の味はわかるようで、山岡が出した一見何の変哲もない「ご飯と味噌汁と土佐の丸干し」の本質を見抜いた。

 京極は山岡に「あんた、海原さんの息子と違うか?」と発言。海原雄山にもその話を報告したようで、証言を聞いた雄山が東西新聞社に乗り込んでいる。断絶していた親子を再会させたのは、京極だったのだ。

山岡の鮎をカス呼ばわり

 雄山・山岡親子を引き合わせた京極は、しばしば揉め事の原因となる。その中でも有名なのが、2人を巻き込んだ「鮎対決」だった。東京駅の階段で転んだ京極は入院し、見舞いに来た雄山と山岡が病室で鉢合わせに。そこから2人が「鮎の天ぷら」をごちそうすることになる。

 山岡の鮎を食べた京極は「こんなにうまい鮎の天ぷらは食べたことがない」と絶賛する。ところが雄山の鮎を口にした瞬間涙と鼻水を出し「なんちゅうもんを食わせてくれたんや」「これに比べたら山岡さんの鮎はカスや」とまさかのカス呼ばわりをした。この発言は『美味しんぼ』史上に残る名言である。

 雄山の出した鮎は京極が幼少期に食べていた高知県四万十市のもので、味に感動したものと見られるが、山岡も「善意」で鮎の天ぷらを作ったのは明白。「カス」呼ばわりは流石にひどすぎるようにも思えた。

借金を踏み倒して逃げた男に温情

 物語が進むに連れ、京極は山岡・栗田の良き理解者としてのキャラが確立される。それに加え、義理人情に厚い資産家としての一面を見せるようになる。27巻では紙すき名人として京極からの支援を受けながら、遊びに狂い、借金を踏み倒して逃げた小松という男と「岡星」で再開。

 借金を踏み倒して逃げたとなれば警察に訴える、力ずくで返金させるなどするのが一般的だが、京極は再会できたことに喜び、すべてを許したうえで再び紙すき名人として支援することを約束した。

裏社会とのつながり?

 究極対至高の審査員も務めるようになり、初登場時の攻撃的な態度が見られなくなった京極。しかしフィクサーとしての1面を見せたこともある。山岡・雄山を追い落とそうとする極悪テレビの金上との対決編では、東西新聞社が金上の罠に引っかかっていることを見抜くと、電話で何者かに連絡し「裏情報」を仕入れていた。

 さらに「裏の情報を集めるのはお手の物や。金上の狙いがなにか探り出して差し上げましょう」と裏社会に顔が利くような素振りを見せている。すっかり「善人」になった京極だが、裏社会にも通じている様子だった。

邸宅に居住

 56巻では娘が2人いることや、妻と死別していることも明かしている。「岡星」で「財産分与を始めている」と話すと、一部で権力者大好き説がささやかれている栗田が「まあ、京極さんの財産と言ったら大変なものなんでしょうね」と色めき立つシーンも。

 邸宅はにまるで御所のような造りで、家を訪れた山岡が「犯罪的に素晴らしい邸宅だよ」と嫌味を言うと、「この家は東京にも別邸があったほうが便利やろうと亡くなった家内が設計からなにから全部自分の趣味でやってくれた家」と本邸ではないことを伺わせていた。

 京極がなぜ莫大な金を持っているのかについては「幼少期から米問屋に丁稚奉公し、戦前の米相場での儲けをもとに現在の地位を築いた」ことしかわかっていない。具体的にどのような方法で億単位の金を儲けたのは、非常に気になるところである。

 山岡夫妻や海原雄山と友好関係を築き、良き理解者として振る舞う京極だが、「裏社会とのつながり」も持っている様子。謎の多い人物であると同時に、敵に回すと厄介ともいえそうだ。

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