【漫画】ゾンビが蔓延する世界、なぜ「噛まれた」のカミングアウト合戦に? “お約束”をネタに昇華したSNS漫画が斬新
「ゾンビ作品のお約束をネタにできないか」
――『カミングアウト』を制作した背景を教えてください。
ゆのこショウ:「“商業誌に載せてもらうのは難しいと判断した漫画のネタ”をWeb上で公開しよう」と思い立って描き始めた作品の1つです。
――本作はゾンビ作品ですが、なぜゾンビものにしようと?
ゆのこショウ:もともと海外映画、中でもパニック映画が好きなので、それをネタにした漫画をいくつか考えていました。『カミングアウト』は映画や海外ドラマなどを見ていて、「“ゾンビに噛まれたら自分もゾンビになる”というお約束をネタにできないか」と思ったことがキッカケです。
――ゾンビと戦うのではなく、“ゾンビに噛まれていたことをみんな隠している”ということを軸に展開していくのは斬新でした。
ゆのこショウ:先述した通り、有名なゾンビ映画では、「ゾンビに噛まれたら自分もゾンビになる」ということが定番です。また、噛まれた登場人物の多くは他の人にバレないよう、その事実を隠そうするケースも珍しくありません。「この展開を逆手にとってどうにか面白くできないかな」と思い、おおまかな流れを考えました。
――登場人物は年齢も性別もバラバラで、短編ながらきちんと個性が感じられました。
ゆのこショウ:登場人物はパニック映画に出てきそうな一般人たちを意識しています。年齢や性別がバラバラなのも、ゾンビから逃げてきた生存者たちが赤の他人であることを分かりやすくするためです。ただ、そういうことは特に意識しておらず、ただ適当に描いただけだった気もします……。
――「みんな仲良くゾンビになる」というラストもありえたと思いますが、“無事に救われる”というハッピーエンドでしたね。
ゆのこショウ:「結末はハッピーエンドにしよう」と思って描き始めました。全員がゾンビになってしまう展開もアリだとは思うのですが、完全にバッドエンドになってしまい後味が悪くなるから避けました。
――洋画の吹き替えのような粋な言い回しが多く、セリフを読んでいるだけでも面白かったです。
ゆのこショウ:セリフ回し自体は素直に考え付いたセリフをそのまま入れているので、そこまでこだわっていません。ただ、テキストの大きさやフォントの種類は読みやすくなるよう注意をしています。また、外国、少なくともアメリカでは日本と違い、“ツッコミ”という概念があまりありません。ですので、ツッコミを入れすぎて、くどくならないように注意しました。
――本作をはじめ、ゆのこショウさんの作品は笑えるポイントが多いです。ボケや笑えるポイントはどのような基準で採用していますか?
ゆのこショウ:やはり「自分が面白いと感じたか・笑えると思ったかどうか」を目安にしてます。もちろん全ての読者にネタや意図が伝わるわけではありません。また、笑いの基準も人それぞれだと思います。それでも、自分が面白いと感じないものを漫画のネタとして描くことはできないので……。
――最後に野心や宣伝などあれば教えてください。
ゆのこショウ:ツイッター上でも宣伝しようと考えているのですが、2023年9月初めにWebコミックサイト『コミプレ-Comiplex-』の「ヒーローズ」というレーベルで『天津水市「がご」撲滅だより がごはん』という漫画を連載予定です。
天津水市という熊本県内の架空の街を舞台に4人の一般女性が“がご”と呼ばれる妖怪(みたいなもの)を退治していくギャグ漫画となっています。連載作ということで読切とはいろいろ勝手が異なり、描くのが大変なのですが一読してもらえると嬉しいです。