『BLUE GIANT』で一番面白いシリーズは? 新章突入を機に見どころと登場キャラクターを振り返る
ロマンあるロードムービー『BLUE GIANT EXPLORER』
そして2020年5月からスタートしたのが、前シリーズとなる『BLUE GIANT EXPLORER』。国際的な名声を獲得したとは言えないものの、ヨーロッパで一定の成功を収めた大がジャズの本場・アメリカを横断しながら成長していく、ロードムービー的ロマンのある物語だ。大が降り立ったのは、ジャズのメッカといえる東海岸ではなく、西海岸のシアトル。中古の日本車で街から街へ、多くの人に出会い、衝撃を与えながら学び続ける大の姿がいい。
その道中で組んだバンド「Dai Miyamoto Momentum」のメンバーが、「NUMBER FIVE」に輪をかけた曲者揃いだ。メキシコで出会ったピアニスト=アントニオ・ソトは、大やブルーノと対照的な明るいキャラクターだが、勝気な性格も面白い。すでに業界で高い評価を得ながら、一歩を踏み出せずギャンブルで生計を立てているゾッドは、これまで登場したキャラクターのなかでもトップクラスの実力者だ。さらにマイアミに住むベーシストのジョーは、酒浸りだが紛れもない天才で、ポテンシャルが計り知れない。
ニューヨークを舞台に展開する最新シリーズ『BLUE GIANT MOMENTUM』にそのまま繋がるエピソードのため、未読で時間のない人は、ひとまずこちらを読んでおくのもいい。アメリカという広大な国が持つ多様性や、地域によって違うジャズの捉え方など、綿密な取材を経た描写に説得力があり、旅行好きの読者にも響きそうだ。
各シリーズ、初見の気持ちになって読み直してみたが、なんと言っても「宮本大」というキャラクターに芯が通っており、なおかつ登場人物が大きくリフレッシュされるため、時系列順でなくとも十分に楽しめそうだ。いよいよジャズの本場に乗り込む宮本大の活躍を見届けるとともに、特に未読の方は過去のシリーズも読み進めてみよう。