ドラマ『トリリオンゲーム』は佐野勇斗に注目! ナイーブ&チャーミングなガクを好演中

『トリリオンゲーム』佐野勇人演じるガクに注目

 TBS系で好評放送中のドラマ『トリリオンゲーム』。原作は 「ビッグコミックスペリオール」(小学館)で連載中の同名コミック(原作:稲垣理一郎/作画:池上遼一)で、ゼロから起業して1兆(トリリオン)ドル稼ぐことを目指す二人の青年のサクセスストーリーだ。

 キャスティングの面で早くから話題を呼んでいたのは、人間力が異常に高い“世界一のワガママ男”ハル(天王寺陽)を演じる、Snow Manの目黒蓮だ。実際、目黒は豪胆でコミュニケーション能力に優れるハルを見事に演じ、原作ファンからも高く評価されている。一方、第一話でそれ以上ともいえる評判を獲得したのが、ハルと対照的なもう一人の主人公・ガク(平学)を演じた佐野勇斗だ。

 大いにハッタリも利いた物語のなかで、ハルというキャラクターが持つ魅力、痛快さは伝わりやすく、ノリに乗った目黒蓮が演じるなら注目を集めることはほとんど確定していた。原作の面白さを伝える上でむしろ重要なのは、ガクをどれだけ愛されるキャラクターとして実写化できるか……ということだった。その意味で、佐野勇斗の存在は極めて大きい。

 あらゆる面で超人的で“何でもあり”なハルと比較して、ガクは基本的に多くの人が共感可能なキャラクターだ。卓越したプログラミング能力を持っているものその他の面は平凡、コミュニケーションは苦手で、いつもハルの突拍子もないアイデアに振り回される。ハルに見込まれ、実際に結果を出してしまうガクも普通ではないのだが、常識的な感覚を持ち、読者を置いてけぼりにしない狂言回し的な役割を果たしている。ガクがいるから、ハルというヒーローが際立つのだ。

 共感しやすいキャラクターといえば、序盤から登場する新入社員として、福本莉子が演じる高橋凜々(りんりん)がいる。真っ直ぐすぎる“カタブツ”ぶりが災いして、就職活動全敗中。しかし、ハルとガクに採用され、入社1日目にして代表取締役社長に任命されて……という、巻き込まれ型のヒロインだ。ただ、彼女の調査能力や愚直なまでの努力は、すぐに“共感”より“リスペクト”を生むことになり、読者・視聴者目線からは外れていく。その点、ガクのプログラミング能力はわりとブラックボックスに近く、普段の頼りない様子や誠実な姿勢と相まって、高い共感値を維持しているのだ。

 一方で、「実写化」に際して難しいのは、漫画でデフォルメされることで担保されてきた“愛嬌”が再現されるかどうかだ。生身の人間が演じるガクというキャラクターは、ともすれば「卑屈なオタク/ギーク」という印象が勝り、共感しづらい変わり者になってしまう可能性もあった。しかし佐野勇斗は、端正なルックスと、近年で難しい役どころもこなしてきた演技力、そしてボーカルダンスユニット「M!LK」のメンバーとして培ってきた愛され力で、「ナイーブだがチャーミング」というガクの魅力を引き出している。

 ドラマ『トリリオンゲーム』がこのまま好評を維持するとすれば、演者として最大の功労者は佐野になるかもしれない。とはいえ、この後も一癖も二癖もあるキャラクターたちが大暴れする展開が待ち受けているので、原作で予習しつつ、実写でどう演じられるのかを楽しみにしたい。

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