ドラマ化話題『トリリオンゲーム』の主人公コンビ、名作『サンクチュアリ』とどう違う? 興奮を高める“役割分担”を考察
テレビドラマ化が発表されて話題の人気漫画『トリリオンゲーム』(原作:稲垣理一郎/作画:池上遼一)。「ビッグコミックスペリオール」(小学館)で連載中の本作は、事業内容も決めずに起業したふたりの青年が、ゼロから1兆(トリリオン)ドル稼ぐことを目指すスタートアップ・コミックだ。
池上遼一の特徴的な作画と、ふたりの主人公を据えたバディものであるという共通点から、名作『サンクチュアリ』(原作:史村翔)と比較する読者も少なくない。『トリリオンゲーム』はよりエンタメ感が強く、過激な描写こそ抑えられているものの、『サンクチュアリ』に感じられたサクセスストーリーとしての痛快さが共通している。原作者の稲垣理一郎が『サンクチュアリ』好きを公言していることもあって、どちらかの作品を未読の人はチェックしてみるといいだろう。
一方で、両作の主人公コンビには明確な違いがある。
『サンクチュアリ』の主人公は、全国の暴力団を統一し、社会の裏側から日本を変えていく北条彰と、政治家として大成し、社会の表側から日本を変えていく浅見千秋。戦乱のカンボジアから日本に逃れ、腐敗した政治体制を変えるという大志を描くふたりは、そもそも「表」と「裏」の役割分担をジャンケンで決めており、ともに知力・体力・胆力に優れたヒーローだ。
『トリリオンゲーム』の主人公は、人間力が異常に高い“世界一のワガママ男”ハル(天王寺陽)と、対人スキルは皆無だが一流のプログラミング能力を持ったガク(平学)のコンビだ。ハルが北条や浅見のようなヒーローであり、ガクは卓越したスキルこそ持っているものの、多くの人に共感可能なキャラクターになっている。
異様な人間力を持ったヒーローがふたりの『サンクチュアリ』と、ハルがひとりでその役割を背負う『トリリオンゲーム』。それならば得られる興奮は前者のほうが圧倒的に大きいかというと、決してそうではない。ガクが基本的に善良で弱い人物であり、常識的な視点を持っているからこそ、“何でもあり”で突き進むハルのハチャメチャさが強調される(あるいは許される)構造になっており、場面によっては「ヒーロー×ヒーロー」のコンビより強烈なインパクトを残すことに成功していると言えるだろう。
テレビドラマ版で、そんなガクとハルのキャスティングはどうなるのか。『七人の侍』のようにひとり、またひとりと集結する個性的な仲間たちも含め、実写で動く姿を楽しみにしたい。