「ビッグコミックオリジナル」なぜ男性向けコミック誌のトップに? 『釣りバカ日誌』など人気作の底力

『ビッグコミックオリジナル』シェア率の背景

 一般社団法人 日本雑誌協会より2023年1月から3月における印刷証明付部数(印刷部数公表)が発表された。同データは日本雑誌協会、日本ABC協会、日本雑誌広告協会で統一した「雑誌ジャンル・カテゴリ区分」を元に雑誌を分類し、年4回(以下の3ヶ月単位)公表するもの。

 男性向けコミック誌のトップは小学館の「ビッグコミックオリジナル」27万7,833冊数、次いで集英社「週刊ヤングジャンプ」27万7,500冊数、講談社「ヤングマガジン」19万4,689冊数、小学館「ビッグコミック」16万9,667冊数と続く。

2023年1月〜2023年3月 男性向けコミック誌の印刷証明付部数


 かつては「ヤンジャン」「ヤンマガ」がトップを争っていた時代があり、意外にも今は一位が「ビッグコミックオリジナル」。それはなぜか?

2008年4月~2008年6月 男性向けコミック誌の印刷証明付部数


 「ビッグコミックオリジナル」のシェア率の高さと、その背景について漫画評論家の島田一志氏にデータを紐解いてもらった。

「まず、個人的には、『ヤンジャン』『ヤンマガ』よりも『ビッグコミックオリジナル』の方が上、という結果にちょっと驚きました。『ビッグコミックオリジナル』は、1970年代の初頭に『ビッグコミック』の増刊号として作られ、のちに正式に独立した雑誌です。もともとのカラーは少し違うものだったような気がしますが、現在の同誌の主流は、『釣りバカ日誌』『黄昏流星群』『深夜食堂』『三丁目の夕日』など、比較的年齢層が高めの方々が安心して読めるような作品。なんとなく、“いま、雑誌で漫画を読む層”の顔が見えてくるようなラインナップでもありますよね。

 いずれにせよ、今後の大人の男性向けの漫画雑誌は、ますます厳しい状況になっていくでしょうし、極端な話、各社1誌くらいしか残らない可能性すらある。それでも、“雑誌連載”という形でしか生まれない漫画のテンポやノリというものは間違いなくあると思いますし、じっさい『ビッグコミックオリジナル』の増刊号からは、松本大洋さんの『東京ヒゴロ』のような新しい作品も生まれている。いささか楽観的すぎる意見かもしれませんが、出版不況なんかには負けずに、これからも“雑誌の底力”を見せ続けてほしいですね」

 講談社の「イブニング」が2023年2月28日発売を持って休刊になるなど、悲しい知らせも多い中、残された誌面で、コミック誌ならではの名作が育っていくのを期待したい。

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