読書感想文、卒論、学術論文……AIが不正の温床に? AIが書いた”文章”は見破れるのか
AIを読書感想文の作成に使用するのはNG――「青少年読書感想文全国コンクール」を主催する全国学校図書館協議会は、AIを用いて作成された感想文が応募されることを懸念し、来年度の応募要項の改定を行うと発表した。盗作のほか、不適切な引用が判明した場合は審査の対象外となるという。
読書感想文に関しては、いわゆる宿題代行サービスの業者が執筆を請け負う例もあり、問題視されていた。しかし、主催する団体や審査員が、AIの執筆をどうやって見抜くのだろうか。いったい、その術はあるのだろうか。
ネットが普及したころ、大学の卒業論文のコピペが大きな問題になった。そもそも卒業論文のパクリや代行は手書きが主体だった時代から普通に行われていたし、あろうことかそれでも通していた大学があるのだが、とはいえ丸写しレベルのコピペならまだ判定することはできた。
しかし、ChatGPTで作った原稿をつなぎ合わせた場合、不正を判断するのは至難の業である。現時点ではまだChatGPTが作り出す文章には事実関係の間違いが多く、専門性が高い分野は苦手とされる。とはいえAIは日々学習する。時間を経るごとに精度も上がり、文章作成能力は飛躍的に向上していくため、手の打ちようがない。
したがって、対策を講じたとしても、いたちごっこが続くのではないか。結局、原稿をAIの作と判定できるAIでも開発されない限り、性善説に頼るしかないのが現実だと思われる。
ところで、今後AIを不正使用して問題化する可能性が高いのは、子どもの読書感想文でも、大学生の卒論でもなく、大学などの研究者の論文である。むしろ、読書感想文よりもそちらの対策が急務だと記者は考える。
日本は世界屈指の論文捏造大国である。世界の論文撤回数ランキングを見れば、ダントツ世界一の183本の論文を撤回した元東邦大学准教授で麻酔科医の藤井善隆を筆頭に、ベスト10に日本人が何人も入るという情けない状況にある。今年も岡山大学に所属する神谷厚範が、4年前に国立循環器病研究センター在籍時に発表した癌に関する論文で100ヶ所以上の捏造を行っていたことが発覚した。
論文捏造の問題はSTAP細胞の研究でクローズアップされたが、あれはたまたまリケジョといいうネタが話題になったからバレたというだけで、あの程度の捏造や、怪しい論文はごく普通にみられると語る識者もいる。
とりわけ医学の分野は追試が困難であり、捏造がバレにくい。論文の査読もはっきり言ってアテにならない。記者が以前に取材したある研究者は査読を頼まれてもほとんど読んでないと笑いながら言っていたが、これではAIの執筆を見抜くなど無理であろう。そもそも、捏造された論文も査読を通過しているのだから。
日本は科学技術立国を標榜するが、現状の研究不正の多さを見るに、それは極めて難しいのではないかと思う。国立大学の法人化を機に予算獲得競争が過熱し、論文の質よりも量を競うようになったことも論文捏造に繋がっていると語る論者もいたが、いずれにせよ、研究不正は許されることではない。AIの急速な普及を機に、研究倫理の問題にも真剣に向き合う必要がありそうだ。