マキノ出版が破産「壮快」「安心」「ゆほびか」……シニア健康雑誌の主な販路である地方書店減少が一因に

マキノ出版が民事再生手続廃止、破産へ

 「壮快」「安心」などの健康情報を紹介する雑誌で知られたマキノ出版が、5月29日、民事再生手続廃止決定と保全管理命令を受け、破産に向けて手続きすることが決まった。

 マキノ出版は3月2日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、3月7日に開始決定を受けていた。その後、「壮快」「安心」「ゆほびか」のほかウェブサイトなどは譲渡先が決まっていたが、有力なスポンサー企業を見つけることができなかった。

 帝国データバンクの発表によれば、2004年2月期に約36億1800万円を計上していた売上高は、2022年2月期には約14億5600万円と、半分以下まで落ち込んでいた。申請時点の負債は約15億7217万円という。

 マキノ出版は1974年に設立されたマイヘルス社を前身として、1977年に設立。とりわけ、「壮快」は同社の看板雑誌であり、創刊以来、数々の健康法ブームを生み出し続けてきたパイオニアとして名高い。しかし、近年の出版不況やインターネットの普及を受けて売上が減少していたという。

 なお、日本雑誌協会のページにデータがなかったため、「壮快」「安心」の最新の発行部数は不明。参考までに、NHK出版「きょうの健康」は10万1500部、主婦の友社「健康」は8500部となっている。いずれも、2023年1月〜3月までの3ヶ月毎の平均印刷部数。

書店の減少がシニア向け雑誌に打撃を与えた?

 出版業界では安泰とみられていたシニア層向けの雑誌やムック本だが、実際は部数減が深刻である。シニア向け情報誌では「ハルメク」が定期購読の会員数50万人を突破するなど独走状態にあるが、雑誌「LEON」を立ち上げた編集者の岸田一郎が2017年に創刊した「GG」は、1年も経たないうちに休刊となった。

 もはやシニア向けの雑誌であればなんでも受けるわけでもないし、そんな甘い考えで商売ができる時代は終わったといえる。とりわけ、シニア向けの健康情報誌に強みを持っていたマキノ出版の破産を受け、今後は冬の時代が到来することが予想される。

 シニア向け雑誌が衰退しつつある原因は、書店の減少とも切り離せない。出版科学研究所のデータによれば、2003年度に2万880店あった書店は、2022年度にはわずか1万1495点へと減少。2022年度には81店の新規出店があったが、477店が閉店しており、深刻な状況が続く。

 現代のシニア層はスマートフォンやパソコンを使いこなしてショッピングを楽しむ層が多いが、依然としてAmazonなどのネット書店を利用できない層も少なくない。そういった層は書店が閉店してしまうと、そもそも本を買うことができなくなる。なお、2022年12月8日に発表された出版文化産業振興財団の調査によれば、地域に書店が1店もない「無書店自治体」は、全国1741市区町村のうち456に上るという。これは、約26.2%にあたる市区町村に書店がないという計算になる。

 地方の書店は、シニアの購読者に向けて配達を行うサービスを行っている例もあるが、コロナ騒動の長期化やロシアのウクライナ侵攻などに伴う燃料の高騰、さらに紙代の高騰などで苦境が続いていると聞く。現在のシニア層がさらに年齢を重ねた10年後には、多くの雑誌が休刊に追い込まれる可能性がある。

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