『鬼滅の刃』時透無一郎&不死川玄弥が取り戻した“人間らしさ” 一見対照的なふたりの共通点を考察

『鬼滅の刃』時透無一郎&不死川玄弥の魅力

※本稿は、『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴/集英社)のネタバレを含みます。同作を未読の方はご注意ください。(筆者)

 現在、テレビアニメシリーズが放送中の『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』では、主人公・竈門炭治郎と妹・禰豆子の他に、甘露寺蜜璃、時透無一郎、不死川玄弥という3人の鬼殺隊剣士が“里”を守るために奮闘することになるのだが、本稿では、そのうちの時透無一郎と不死川玄弥の2人に焦点を当ててみたい。

 まず、時透無一郎は、鬼殺隊剣士の最高位――「柱」の1人である。剣の修行を始めてわずか2か月で「柱」にまで登り詰めたという天才であり、「霞の呼吸」の使い手であることから、「霞柱」と呼ばれている。

 また、不死川玄弥は炭治郎と同期の隊士だが、「日輪刀」(※)の力を最大限に引き出すためには不可欠な「呼吸」を使えない。その代わり、鬼を喰らうことで一時的に鬼の力を得られるという特異体質の持ち主でもあり、主な使用武器は銃である(むろん、日輪刀も帯びてはいる)。

※太陽に最も近い「陽光山」の砂鉄と鉱石を原料にした日本刀のこと。鬼を斬ることができる。

一見対照的な2人には共通点もある

 このように、時透無一郎と不死川玄弥の2人は、こと“剣の才能”という点においては、“恵まれた者”と“そうでない者”という風に対照的に描かれてはいるのだが、実は、両者には共通する部分も少なくない。

 たとえば、2人とも“兄想い”の少年だという一面がある。

 もともと山で木こりとして生活していた無一郎には双子の兄がおり、一方の玄弥は7人兄弟(兄妹)の次男だった。しかし、貧しくも平穏な日常生活に恐ろしい鬼が突然紛れ込んできたことにより、2人は大切な兄を失ってしまう。前者の兄はそのとき命を落とし、後者の兄は、(鬼は倒せたものの)ある誤解がきっかけで、弟の元を離れることになるのだ(それが後の「風柱」不死川実弥である)。

 結果的に無一郎は記憶をなくし、あまり感情を表に出さない(出せない)冷たい現実主義者になり、玄弥もまた、常に苛立ちと焦りに突き動かされ、本来の心優しい少年ではなくなっていた……。

炭治郎が取り戻させてくれたものとは

 そんな2人を変えたのが、竈門炭治郎だった。そう、刀鍛冶の里での戦いの中で、炭治郎は、彼らの閉ざされた心を再び、開かせることになるのだ。

 具体的にいえば、無一郎は、炭治郎のある一言がきっかけで、なくしていた家族の記憶を甦らせることができ、玄弥は、(最初は反発していたにもかかわらず)炭治郎と共闘することで、(あるいは、炭治郎と禰豆子の兄妹愛を目にしたことで)忘れかけていた“何か”を思い出す。そして、2人とも、本来持っていた“人間らしさ”を取り戻すのである。

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