『ドラゴンボール』「超サイヤ人が金髪なのは、ベタを塗る手間を省くため」鳥山明の“忙しすぎる“エピソード

『ドラゴンボール』ランチなぜ消えた?

 鳥山明は『Dr.スランプ』『ドラゴンボール』など数々の傑作を生みだしてきた漫画家である。長期に渡る週刊連載を続ける中で多忙を極め、数々の伝説的なエピソードが存在する。

 例えば、「超サイヤ人が金髪なのは、ベタを塗る手間を省くため」「スクリーントーンを使わないのは面倒くさがりだから」などのエピソードは有名だ。

 忙しすぎて時間がなく、なんと全編をサインペンで描いてしまった漫画がある。当時「週刊少年ジャンプ」にあった愛読者賞という企画の一環で、1981年に発表された『POLA&ROID』という作品だ。鳥山流のギャグを織り交ぜたSF漫画である。

 愛読者賞の一員に選ばれるのはジャンプの連載作家としては名誉なことだが、選ばれた瞬間から苦労の始まりである。何しろ、週刊連載と並行しながら読切を45ページ描くことになるのだ。鳥山はそれまでの読切で描いたこともないページ数と必死に向き合いながら、必死の思いで原稿を上げたようである。

 この漫画は鳥山の短編集『鳥山明〇作劇場』1巻に収録されているが、他の作品とペンタッチが明らかに異なるのはサインペンで描かれたためである。そんな作品であったが人気投票で1等賞に選ばれ、「ほかの人たちに悪い気がしてしまった」と鳥山は振り返っている。

 ちなみに、愛読者賞の執筆順はくじ引きで決まるそうだ。よりによって鳥山は1番を引いてしまい、他の漫画家がゆっくりと休みを謳歌している中、原稿をする羽目になったエピソードもある。

 鳥山自身がペン入れをした記憶がない話もある。『Dr.スランプ』の「クレイジー・ハネムーン」の巻である。センベエさんが山吹先生と結婚して新婚旅行に出かける話なのだが、原稿中に高熱にうなされてしまう。しかし、締切は間近に迫っている。おそらく鳥山は高熱を出しながらも原稿に向き合っていたのだろう。気づいたときには原稿が完成していたようだ。

 鳥山明はしばし、週刊連載のキツさやしんどさについてコメントしているが、これ以外にも公表していない凄まじいエピソードが無数に存在するに違いない。鳥山は週刊連載をこなしながら『ドラゴンクエスト』のキャラクターデザインなど、多岐に渡る仕事を行っており、超人的なスケジュールをこなしていたことがわかる。

 週刊連載は漫画家にとって大変すぎる仕事であるのは間違いないだろう。我々が楽しむ数々の名作は、漫画家の汗と涙によって生み出されたものなのだ。

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