「生きて腸まで届く」は本当か? 飲み物のウソ・ホントを専門家が科学的に解説
「生きて腸まで届く」とされるプロバイオティクスを含んだヨーグルト飲料は、効果を過剰に期待しない方がよさそうである。生きた細菌や酵母を指すプロバイオティクスは、摂取してもすべてが腸に届いているのか、効果を得るのにどのくらいの量が必要なのか明確になっていない。健康効果を挙げるためには腸に定着しなければならないが、定着していると示す証拠は少ない。本書ではエビデンスで消費者に対し不都合な事実を伏せる手法について、詳細な種明かしもされている。
こうした現実を知ると不確かな情報に踊らされるより、苦手な成分が入っていないかであるとか、味の好みで飲み物を選ぶ方がよっぽど気楽で健康的に思えてくる。著者自身も飲み物を嗜好に基づいて楽しんでいるらしいことが、本書の端々から伝わってくる。「バニラビーンズとメープルシロップのスムージー」のカロリーはコカ・コーラの2倍だと明かしながら〈しかしこれが美味い!〉と心の声が漏れ出たり、ワインの定義を説明するはずが〈ブドウ園はすばらしいところだ〉という出だしから、世界各地のブドウ園やワイナリーを訪れた時の思い出話に花が咲いたり。専門的な話の中に愉快な脱線が挟まり、科学は苦手という人でも親近感を持って読める点も本書の大きな魅力である。
ちなみに著者が好きで毎朝飲んでいるというルイボスティーは、ルイボスの葉にポリフェノールが豊富に含まれている。ただし、加工を経てお茶になってからの効果は実証されていない。ルイボスティー好きの本人が、朝飲むのは〈もしかしたらただのお湯でもいいのかもしれない〉と分析していて可哀想すぎるが、本書に忖度はないという何よりのエビデンスとなっている。