「生きて腸まで届く」は本当か? 飲み物のウソ・ホントを専門家が科学的に解説

「生きて腸まで届く」は本当か?

 コンビニやスーパー、自動販売機で何種類も並ぶ飲料。「1日に必要な量の〇〇を配合」「脂肪を減らす」など、体調の気になる時に飲みたくなる効能を謡う商品も多いが、これらのキャッチコピーは事実なのだろうか。本書『DRINK あなたが口にする「飲み物」のウソ・ホント』(白揚社)で、その真偽が明らかとなる。

 著者のアレクシス・ウィレットは、ケンブリッジ大学で生物医学の博士号を取得した、健康問題の専門家。水にはじまり、ミルク、ホットドリンク、コールドドリンクそしてアルコールと、それぞれの飲み物の種類の定義から人体への影響まで、科学的知見を基に解説していく。

 飲み物として見てみると、「水」ひとつとっても多種多様な水が存在している。水道水は水道水でも、場所によって軟水・硬水の違いはあるし、浄水ポットを通して飲んでいるという人も少なくないはず。浄水ポットはフィルターで不純物を除去して、水の味を良くするのが売りである。だが、著者はその有効性に疑問を呈している。水道水は水道設備の整備された地域であれば、汚染物質が入念に処理されている。水が蛇口から出てくる時点で、浄水ポットで除けるとされる物質は存在しないはずなのである。しかも水道水を少し冷やせば塩素は飛び、不快に感じる味や臭いも軽減される。

 その他ミネラルウォーター、炭酸水、酸素水、アルカリ水など飲料水の種類として挙げられていくが、水道水の安全さに取って代わるメリットを持つ水はない印象である。とはいえ水道水も完璧なわけではなく、非常に微量ながら混入した薬品が一部残っている可能性は世界中の水道であるという。現状はリスクもおそらく少なく、著者曰く〈ただし当面のあいだは、大半の人にとって避けようがないことについて思い悩んでもしかたがない。心配すること自体による害の方がよっぽど大きいかもしれないのだから〉ということになる。

 無責任に感じるかもしれないが、飲料の健康への影響を判断するまでには厳密な調査と研究が必要で、手間も時間もかかる。効果が判明していたとしても、利害関係のある企業や研究機関が検証に関わり、客観性の保てていないケースも少なくない。断定しないスタンスの方が、むしろ信頼に値するといえるのである。一方、「○○にいい」と断言するような言説は、額面通り受け取っていいか注意を要することが本書で明らかとなっていく。

 たとえば「デトックス」は、専門家からするとナンセンスなコンセプトなのだという。体内から有毒物質を排出するデトックス効果を謡った健康飲料は多いが、消化器や肝臓・腎臓など人体に備わった処理メカニズムに勝るものはない。インスタグラムでセレブが絶賛して流行したデトックスティーは、長期的な健康効果は証明されておらず、成分に含まれているセンナが消化不良や脱水症を引き起こすおそれもある。

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