『ばらかもん』が期間限定で連載復活 ほのぼのでも心に突き刺さる“アイランドコメディ”の魅力

『ばらかもん』期間限定で連載復活

 長崎県・五島を舞台にした“ほのぼのアイランドコメディ”漫画『ばらかもん』(ヨシノサツキ)が4月12日発売の「月刊少年ガンガン」5月号より、期間限定で復活することが発表された。主人公・半田清舟の学生時代を描いたスピンオフ作品『はんだくん』を含め、連載は2019年に終了しており、続編を求めていたファンは歓喜。発表を受けて、SNSでもトレンド入りするなど話題を広げている。

 本作の主人公は、自作を酷評した業界の重鎮を殴ってしまい、キャリアを棒に振りつつある若手書道家・半田清舟。父で高明な書道家の清明は、彼に自分を見つめ直させるため、ゆかりのある長崎県·五島で生活させることに。当初こそ悪びれる様子もなく、突然の田舎暮らしに辟易する半田だが、五島の豊かな自然と、天真爛漫な少女・琴石なるをはじめとする地域の人々との交流のなかで、多くの大切なことを学んでいくーー。

 公式のキャッチコピーとして、冒頭に記した「ほのぼのアイランドコメディ」という言葉がある。五島の人々との交流は、何かと忙しなく、神経質になりがちな都会の日常を忘れさせ、確かに「ほのぼの」とさせてくれる。しかし一方で、半田だけでなく読者にとっても、心に鋭く突き刺さる切実なエピソードも多く、笑って読んでいると思わぬ感動が得られる作品だ。

 その中心にいるのが、本作のもうひとりの主人公とも言える少女で、人気キャラクターの琴石なる。神経質な半田と好対象な明るくたくましいキャラクターだが、意外と面倒見がいい半田によく懐き、その心を溶かしていく。「謝っとは、ばり怖かね」「登ってみらんば分からん。見ようちせんば見えん」など、本作のファンなら、心に刻まれたなるのセリフは少なくないだろう。おそらく、幼年キャラは無垢すぎても、かしこすぎてもリアリティがなくなってしまう。その点、なるのキャラクター造形はバランスがよく、ヨシノサツキの優れた人間観察力がよく表れている。

 そして、本作の魅力として大きいのは、「五島」という舞台だ。ヨシノサツキ自身、長崎県五島市出身(在住)で、外部の作家では生み出せない説得力がある。離島の不便を人と人の関係で補い合う生活が、都会的な生活やコミュニケーションに染まった半田の心を穏やかに解いていく過程は、自然であるがゆえに説教くささがない。五島といえば、NHK浅野連続テレビ小説『舞いあがれ!』でも関心を集めているが、『ばらかもん』の聖地巡礼で訪れたファンも少なくないだろう。そして、今回の期間限定連載でさらに増えそうだ。

 今回はおまけのように彼らの日常を垣間見るものではなく、期間限定であっても「連載」だ。彼らの変わらない日常も描かれるかもしれないが、物語を大きく動かすドラマがあることにも期待がかかる。未読の方はこの機会にチェックしてみてはいかがだろう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる