『SPY×FAMILY』アーニャ、『ゴールデンカムイ』アシリパ……漫画作品の魅力を決定づけた幼年キャラたち

漫画作品の魅力を決定づけた幼年キャラたち

 現在、アニメが好評放送中の人気スパイコミック『SPY×FAMILY』。ロイド・フォージャーこと凄腕スパイの“黄昏”が、作戦のために築いた疑似的な家族の「娘」となる、超能力少女・アーニャの愛らしさに、世界中のファンが熱狂している。

 アーニャのように、幼年ゆえの純粋さや愛らしさ、あるいは決して豊富とは言えない人生経験とギャップのある性質で、作品の魅力を決定づけているキャラクターは多く存在する。今回はそんな人気キャタクターたちを振り返ってみたい。

『SPY×FAMILY』アーニャ

 上述の通り、壮大な作戦により凄腕スパイ・黄昏の娘となったアーニャ。ある期間の実験体として育てられ、孤児院で生活をするというバックグラウンドを持つが、「スパイ」の父と「殺し屋」の母という、新たな家庭環境をエキサイティングなものだと捉え、積極的に楽しむ天真爛漫さが魅力だ。彼女がシリアスなキャラクターだったら、『SPY×FAMILY』のコメディーと興奮/感動の絶妙なバランスは成り立たないだろう。

 序盤で心に残るシーンは、原作の第4話(MISSION:4)。黄昏が遂行を目指すミッションの標的となる要人に近づくため、その息子が通うイーデン校の入学面接に訪れた、フォージャー家の3人。同校の飼育舎から動物たちが逃げ出し、会場がパニック状態になるというハプニングが起こってしまうが、アーニャは超能力を使い、怯えて暴走していた牛に「だいじょうぶます こわくない」と声をかけ、この問題を解決する。

 丁寧語もあやふやで、決して器用ではないが、重要な局面ではいつでも真剣に、誰よりも優しい解決策を見出すアーニャ。普段の天然っぷりとのギャップも楽しいが、だからこそ、ミッションの遂行を第一に考える凄腕スパイが愛情を持ち、時に利害を超えた「家族」としての行動をとることにも説得力が生まれている。良質な「スパイもの」であるだけでなく、本作が「家族もの」であり、「コメディ」であることに大きく寄与しているのが、やはりアーニャの存在だと言えるだろう。

『ゴールデンカムイ』アシリパ

 先日惜しまれながら最終回を迎え、実写映画化も発表された人気作『ゴールデンカムイ』に登場するのは、羆に襲われていた主人公・杉元佐一を助けたアイヌの少女・アシリパだ(※正式表記は「リ」が小文字)。

 漫画作品の幼年キャラとして非常に珍しいのが、主人公からも、そして読者からもある種の敬意を集め、「アシリパさん」と呼ばれているところ。大自然と共に生きる知識と技術を持ち、作中の誰よりもたくましく、変顔も決まった新たなヒロインとして縦横無尽に活躍している。

 最終回を迎えたタイミングで通読する読者も多いタイミングで、細かなエピソードのネタバレは控えるが、伝統を重んじながらその思考は合理的で、目的を共にする杉元を支えるため、覚悟を決めていく姿がなんとも凛々しい。悲しい過去を含めた生い立ち、料理など新しい文化に対する反応、“下ネタ”に対する感受性など、さまざまな側面から、「子ども」であることと、必ずしもその年齢に似つかわしいとは言えない成熟した人格がうまく両立しており、このアシリパさん抜きにして、『ゴールデンカムイ』のここまでの人気は考えづらいところだ。

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