【漫画】アイデアに自信が持てない! 新人コピーライターが「ダメ出しの悪魔」に取り憑かれたら?

――本作には約5万のいいねが集まっています。手応えはいかがですか。

うえはらけいた(以下、うえはら):本作はもともと広告志望の就活生向けのウェブサイト『マスナビ』に連載している「ゾワワの神様」という漫画シリーズで、本作が32話になります。普段は広告業界の方からの反応が多いですが、今回はあらゆる職種の方々が反応がありました。特に印象的だったのは主婦の方から共感の声ですね。そこまで普遍的な内容になっていたのかと。

――内容はご自身の体験談でもあります?

うえはら:実際にこういう出来事があった訳でもありませんし、「ダメ出しの悪魔」というワードも本作のために考えましたが、自分の体験は大きいですね。もともと僕もコピーライターとして働いていたんですが、仕事ができるようになってくると、突然アイデアが浮かばないスポーツにおけるイップスのような症状になる人が結構いたんですよ。

僕自身も打ち合わせに持っていくアイデアが浮かばなくなってしまったんです。普通CMの打ち合わせなら5、6案くらいはほしいところなのですが、ひどい時は2案くらいしか持っていくことができず「どうしたの?」と心配されるくらいでした。その時はまさに自分のなかの「ダメ出しの悪魔」が渦まいている時期だったと思います。

――作品はどのようにまとめていったのでしょう?

最初は「ダメ出しの悪魔」というモチーフが思いついたのがスタートでした。でも「それに打ち勝て」だけだと浅いなと感じたので、それに関する自分のあるあるを考えていたら、このあと終盤「結局この悪魔と誰もが共存しないといけない」というフレーズがあるのですが、これが一番言いたかったことですね。もの作りや仕事ができる人ほど、この悪魔をちゃんと飼ってバランスよく、その言うことを聞いているところがあるなと。だから悪魔を単純な悪者として描きたくなかったんですよ。そういう終わり方にしたいとイメージしていましたね。

――「アイデアを何が何でも完成させること」という打開案についても、自力でいきついたのですか。

うえはら:自分のなかで見出したのもありますし、先輩や上司、コピーライティング講座などでも言われるんですよ。ネットにも「完璧を目指すよりもまずは完成させろ」という話がよくあるので、自然とこう考えるようになりました。

――レトロな質感の絵柄については?

うえはら:全部こういう感じではないのですが、「ゾワワの神様」シリーズでは毎回赤と青の背景で描いています。手塚治虫先生や藤子不二雄先生のタッチに近いとはよく言われるんですよ。その時代の作品は確かに好きなのですが、特に意識してる訳でもなく……。ただ影響はあるかもしれないですね。最近の漫画も読むのですが、エッセイとストーリーの漫画のバランスを考えても、これくらいの絵柄が一番合うのかなと。

――過去にコピーライターをされていたそうですが、今はどのようなスタンスで漫画を描かれているのでしょう?

うえはら:今は専業漫画家です。コピーライターをしていた時も絵の仕事をしたくて、会社を辞めて2年美大で学びました。デザインを専攻していたのですが、物語を作ることにも憧れがあったので両方できるのは漫画家か絵本作家かなと思い。あとは子どもの頃の夢でもあったので30歳くらいから漫画を描き始めました。

――今後はどのような作品を描いていきたいですか。

うえはら:自分も就職した経験がとても大きいので、サラリーマンを励ましたり、出社の憂鬱感が軽減する作品を描きたいですね。現在、自主連載で描いている漫画『アバウトアヒーロー』もそのために書いていて、力を入れてきました。あとは商業誌の連載も興味があるので、いつかは自分が影響を受けた『左ききのエレン』のような物語を生み出せたら嬉しいです。

■関連情報
『ゾワワの神様』
https://ebookjapan.yahoo.co.jp/books/742477/A003752795/

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