紗倉まな、恋愛は「ことごとく玉砕してきた」 3年ぶり小説『ごっこ』の読みどころを明かす
人気AV女優であり、作家としても注目される紗倉まなが2月20日、約3年ぶりとなる小説集『ごっこ』(講談社)の刊行記念記者会見を行った。
『ごっこ』は、野間文芸新人賞候補作となった『春、死なん』に続く作品で、「ままならない恋愛」をテーマとした最新小説集。六つ年下の恋人の浮世離れした逃避行に付き合って、あてのないドライブを続ける表題作「ごっこ」、友人の結婚式に集う客たちの中に夫の不倫相手が混じっているのではないかと勘繰る「見知らぬ人」、田舎町の中学で出会った奔放な女友達タクボに思いを寄せる戸川の心境を描いた「はこのなか」の三篇を収める。
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『ごっこ』を著したきっかけについて、紗倉まなは「担当の編集者から、息抜きに連載小説を書いてみてはどうかというお話をいただき、ちょうど他の原稿も行き詰まっている時期で、救われるような気持ちを抱きながら1話目の短編『ごっこ』を書き始めた」と説明。注目してほしいポイントについては、「これまでの作品と違い、登場人物たちの感情がすごく昂っている。ヒステリックなところもあるが、躍動感がある作品となったと思う。恋愛を軸に小説を書くのも初めてなので、そこも注目してほしい。前作『春、死なん』は高齢者の性をテーマにしていて、読む人を限定していたところもあったかもしれないが、今作はより幅広い読者に届く内容。特に女性に読んでほしい」と語った。
表題作「ごっこ」の着想について問われると、紗倉まなは「私は車の運転をするのが好きで、執筆のアイデアは運転中に思いつくことが多い。『ごっこ』のドライブのシーンは、まさに運転中に『こんな展開になったら嫌だな』と思いついたことを、過去の恋愛とも照らし合わせながら書いた。ぼんやりしている時に思いつくアイデアは大切にしている」と明かす。
ままならない恋愛関係に翻弄される登場人物たちは、時にドメスティック・バイオレンスに走ることもある。感情的な人物造形については「心の底に溜まっていた濁った感情を書きたかった。彼/彼女らのヒステリックな部分は、私自身を反映しているところもある。大人になりきれていないのかもしれないが、自分のそういう部分は愛おしくも感じている」と告白。また、登場人物が好きな相手の短所をわざわざ見つけようとする描写についても、「私と近い部分がある。純粋な『好き』を貫くことができず、自らを歪ませてしまっている。だから私は、恋愛においてことごとく玉砕してきた」と、自身との関連を認めた。
記者から『ごっこ』というタイトルについて、AV女優という「演じること」が求められる職業とも関連しているかと問われると、「恋人ごっこや友達ごっこのように、その関係性をまっとうしようと思っても『ごっこ』の感覚はどこまでいっても無くならない」と普段の人間関係にも「演じること」はついて回ると語り、AV女優の仕事については「自分が主体的にやりたいと思った仕事なのに、相手にやらされていると感じるときがある。例えば服を脱ぐとき、誰のために脱いでいるのかを考えて、主体が曖昧になる。その感情を著したかった」と語った。
30代の抱負については、「周りの女性たちから『30代になるとどんどん生きやすくなる』と聞いている。自分のことがよくわかるようになって、その取り扱い方がわかってくるみたい。20代は自分をコントロールできないことも多かったので、もっとうまく扱えるようになりたい」と語った。
リアルサウンド ブックでは近日、紗倉まなの単独インタビュー記事も掲載予定。乞うご期待。
■書籍情報『ごっこ』
紗倉まな 著
発売日:2月22日
価格:1,650円(税込)
出版社:講談社