電子書籍の売上鈍化 理由はコロナ特需の終息? 紙+電子は2.6%減の1兆6,305億円で4年ぶりの前年割れに
出版業界の調査・研究機関である(公社)全国出版協会・出版科学研究所は、2022年の出版市場規模を1月25日発売の『出版月報』1月号で報告した。同研究所によると、紙と電子を合算した出版市場(推定販売金額)は前年比2.6%減の1兆6305億円となり、4年ぶりのマイナスに転じた。
電子出版は7.5%増となったものの、紙の市場は前年比6.5%減となり、厳しい数値となった。電子も決して安泰というわけではない。前年まで2割前後の伸びを示していたものの、2022年は一桁台となっており、勢いが鈍化したことがわかる。
電子出版の伸びが鈍化した理由に同研究所が挙げるのが、いわゆるコロナ特需の終息である。2020~2021年は、コロナ禍の自粛に伴う巣ごもり需要が発生し、手軽に本が読める電子書籍の需要が急激に伸びた。また、『鬼滅の刃』などの漫画が歴史的なヒットを記録し、電子書籍の市場拡大に貢献した。
2022年は『SPY×FAMILY』など漫画のヒット作は数多く出ていたものの、ロシアのウクライナ侵攻に伴う物価高が生活を直撃した。日用品の値上げが続く中で、趣味・娯楽品である出版物はその煽りを大きく受ける形となり、同研究所は「買い控えが発生した」と分析している。
具体的な電子出版市場の数値を見てみよう。市場は前年比7.5%増の5013億円。そのうち、電子コミックが8.9%増の4479億円、電子書籍が0.7%減の446億円、電子雑誌が11.1%減の88億円となった。同研究所が統計を開始した2014年は、電子出版市場は1144億円に過ぎなかった。わずか8年の間に、その規模が約4.4倍に拡大。2022年の出版市場全体の電子出版の占有率はついに3割超えの30.7%に達し、市場が紙から電子に移行しつつあるのがわかる。
今回の伸び幅の縮小を、同研究所は「電子市場はいよいよ成熟期に入った感」があると考察する。また、リアル書店以上に電子書籍の書店の間でも熾烈な競争が起こっていく可能性を示唆。「価格に敏感な読者は複数のストアを回遊する傾向が強く、今後はより体力のあるストアが勝ち残っていく」と、予測している。
なお、2022年の紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は、前年比6.5%減の1兆1292億円となった。首都圏でもリアル書店の閉店が相次ぎ、厳しさを増している。
今年はコロナ禍が収束に向かうことが予想され、日本政府はあらゆる感染症対策の緩和に舵を取る。旅行などのレジャーが本格的に復活する中、出版市場がどのように生き残っていくのか、今後の動向に注目される。