出版取次最大手トーハンが中間決算発表。前年同期比10・2%減に 構造的問題を打破する突破口はあるのか
出版取次最大手のトーハンは、11月28日に2022年度連結中間決算を発表した。同社の発表によると、連結子会社26社の連結売上高は1913億8300万円で、前年同期比10・2%減となった。そして、営業損失は7億4300万円となり、前年の11億2600万円の営業利益に対し大幅な赤字となった。
また、トーハン単体の売上高は1786億7300万円となったが、前年同期比10.5%減となり、営業損失は9億6100万円となった。なお、前年は5億200万円の営業利益があった。トーハンが扱う書籍、雑誌、コミックなどのほか、マルチメディアなど全4部門で売上げが減少している。
取次とは、書店に本を流通させる問屋のこと。特にトーハンは日本出版販売(日販)と共に二大大手であり、その決算は出版業界を映す鏡ともいわれる。
全国の書店だけではなく、セブンイレブンの店頭で販売される書籍や雑誌はトーハンが配送を行っている。
取次各社は長引くコロナ禍や出版不況などの煽りを受け、売上高は減少傾向にある。そんな中でもトーハンは、電子書籍取次大手のメディアドゥと資本・業務提携を図るなど、経営改革を推進している。
トーハンの小野晴輝専務はコメントを発表。通期で黒字を目指すことを視野に入れている。直近の11月期の書店POSの売上げが好調なことや新刊単価が上昇していることなど、プラス面をその理由に挙げている。
トーハンは、1973年から発行し毎年改訂を重ねてきた『書店経営の実態』を2021年7月に休止を発表。調査協力店のデータを元に書店の経営指標をまとめた資料であったが、書店の減少や業態の多様化などで、定量的に分析可能なデータ収集が難しくなったことが原因だったという。
書店調査会社のアルメディアによると2020年のデータでは、書店数は1万1024店。そのなかで売場面積を持つ店舗は9763店、実店舗数1万店を割りこんでいる。
取次は、出版社から発行される本を全国の書店に安定的に配本することを中心に業務を行ってきた。現在でも年間7万冊ほどの本や雑誌が発刊されており、1日に約190冊が世に出回っていることになる。
それらを全国津々浦々の書店に届けることは、首都圏の偏重ではなく、知的好奇心のニーズに応え、教養や知識を深める役割を担ったことは大きいといえよう。
しかしながら現在では、地方の過疎化や高齢化、それに本離れなどさまざまな苦境に立たされている取次業界。構造的問題を打破するためのブレイクスルーは、待ったなしの状況だ。