『東京卍リベンジャーズ』クライマックスへと向かう最大の謎「最後のタイムリープ」を考察


※本稿は、『東京卍リベンジャーズ』(和久井健/講談社)のネタバレを含みます。同作を未読の方はご注意ください。(筆者)

 世界累計発行部数7000万部突破――和久井健の大ヒット作『東京卍リベンジャーズ』の最終巻となる31巻が、1月17日に発売された。また、現在テレビアニメの第2期(「聖夜決戦編」)が放送中、4月・6月には、2部構成で実写映画の第2作(「血のハロウィン編」)が公開予定であり、当分の間、「東リベ」ブームが収まることはないだろう。

 そこで本稿では、同作の“最大の謎”ともいうべき、主人公・花垣武道(タケミチ)の「最後のタイムリープ」について考えてみたい。

タケミチの最後のタイムリープの謎とは

 『東京卍リベンジャーズ』の最終章――現代(2018年)から過去(2008年)にタイムリープし、二代目東京卍會の総長となったタケミチは、多くの仲間たちが見守る中、関東卍會総長の佐野万次郎(マイキー)とタイマンを張る。そして、激闘の末、マイキーの心を蝕んでいた呪い(黒い衝動)を受け止め、その場で力尽きる……。

 一方、我に返ったマイキーは、絶命した(と思われる)タケミチの手をつかんで、涙を落とす。と、その瞬間、タケミチの「最後のタイムリープ」が発動するのだ。

 気がつくと、彼は1998年――小学1年生だった頃の世界にタイムリープしていた。

 まず、ここである疑問が生じる。ファンの方はご存じだと思うが、この『東京卍リベンジャーズ』という物語の中では、いくつかの例外(後述する)を除き、基本的には、タイムリーパーはトリガーと握手をすることで、過去と未来(現代)を行き来するのである。

 そのタイムリープの仕組みからすれば、2008年のマイキーが手をつかんだ瞬間、タケミチは再び現代(2018年)へと戻って来るはずなのだ(注・タケミチのトリガーは、本来は橘直人という人物なのだが、この最終章でのタケミチは、2018年のマイキーがトリガーになり、2008年にタイムリープしていた)。

 つまり、前述の場面では、“トリガーであるマイキーがタケミチの手をつかんだことで、タイムリープ現象が発動した”ということまでは理解できるのだが、なぜこれまでのように未来(現代)に戻るのではなく、1998年というさらなる過去へと遡っていったのかが疑問なのである。

 ただし、この疑問については、タイムリーパーであるタケミチ、あるいは、トリガーであるマイキーが、無意識のうちに、“未来(現代)よりも過去に行きたい(行かせたい)”と念じたから、という説明ができなくはない。

 しかし、その過去――1998年の世界には、実は、タケミチだけでなく、(トリガーであるはずの)マイキーも一緒にタイムリープしていた、となると話は別だ。

 じっさい、2人はその時代で“再会”するのである(第276話〜第277話)。そして、力を合わせて理想的な未来を作ろうとするのだが(これが彼らの真の「リベンジ」となる)、この時のタイムリープの仕組み(なぜ2人が同時にタイムリープできたのか)については、2人とも「奇跡だ!!」というばかりで、結局最後まで明かされることはない(タケミチは、この謎について、「オレは君に能力を譲ったつもりだったけど その時の握手で一緒にオレも戻っちゃったのかな」といっており、それが一応の“説明”なのかもしれないが……)。

タイムリープの仕組みを再確認

 そこで、あらためて、『東京卍リベンジャーズ』という物語における、「タイムリープの仕組み」について考えてみたい。

 まず、同作では、以下のいずれかの方法で、タイムリープの能力が、人から人へと受け継がれる。

(1)能力者を殺すことで、“力”を得ることができる。
(2)能力者が望めば、別の人間に“力”を譲ることができる。

 ちなみに、マイキーの兄・佐野真一郎は、かつて弟の死を回避するために、(1)の方法でタイムリーパーとなり、その目的を果たした後、(2)の方法で少年時代のタケミチに“力”を譲っている(ただし、タケミチはその“力”のことを知らないまま成長する)。
 また、前述のように、タイムリープには基本的にトリガーとなる人間の協力(握手)が必要なのだが、中には例外もある。たとえば以下の2例だ。

(1)タケミチが初めてタイムリープした時(第1話)、トリガーとなる人間はいなかった。
(2)真一郎が過去に戻った時(第271話)も、トリガーとなる人間はいなかった(ただし、三途春千夜がその“現場”を目撃しており、間接的にトリガーの役割を果たした、という風に見えなくもない)。

 これらの「例外」から、場合によっては、タイムリープは自力でもできる(トリガーは不要)、ということがわかるだろう。

 そこで再び、先ほどの疑問(なぜタケミチとマイキーは2人同時にタイムリープできたのか)に話を戻すが、たとえば、こういう「仮説」は成り立たないだろうか。

【仮説】
 タケミチは死の間際に、マイキーへ“力”を譲ろうと思い、じっさいに受け継がれた。
 ただし、それは“力のすべて”ではなく、タケミチの中にもまだタイムリープ能力は残っていた。

 つまり、一時的にせよ、「タイムリーパーが2人」という状況が成り立てば、一方(タケミチ)はトリガーに手を握られたことで、もう一方(マイキー)は自力で、タイムリープすることができなくはないのである。

 あるいは、(もう少し想像を飛躍させて)タケミチは“力”の半分をマイキーに譲ると同時に、彼のトリガーにもなった、という見方もできるだろう。この場合は、互いが「タイムリーパーにしてトリガー」という存在になるため、手をつなげば、2人同時にタイムリープすることができる。

 いずれにせよ、『東京卍リベンジャーズ』には、この他にも大小さまざまな謎が残されたままであるが(たとえば、物語の鍵を握るホームレスはいったい何者だったのか、など――)、そうした疑問点や回収されなかった伏線などについては、「設定の破綻」と決めつけるのではなく、我々読者に委ねられた「物語の余白」として、それぞれが頭の中で補完して楽しめばいいのではないだろうか。

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