ゲーム実況者・鈴木けんぞうの初エッセイに予約殺到! やりこみゲーマーと書籍の相性を考察

ゲーム実況者・鈴木けんぞうのエッセイ予約殺到

 ポケモン系ゲーム実況者の鈴木けんぞうが1月16日、初のエッセイとなる『できるだけがんばります。』(KADOKAWA)の刊行について動画とSNSで告知を行なった。発売日は3月8日だが、明けて17日にはamazonの売れ筋ランキング(本)で1位になるなど、予約が殺到している。

 鈴木けんぞうがゲーム実況者としてデビューしたのは2016年。ニコニコ動画に「最初の草むらでレベル100にするポケモンルビー実況」と題したシリーズを投稿し、どこかゲーム実況黎明期を彷彿とさせる企画性と、『ポケモン』シリーズに絞った「気になるけれど誰もやらない(やれない)」レベルの狂気じみたやりこみ/検証で、人気を高めてきた。現在はYouTubeで50万人を超えるチャンネル登録者を抱えている。

 彼が実際にどれくらいの低確率で起こる現象を追いかけ、どれくらいの時間がかかるゴールを設定&クリアしているかは実際に動画を見ていただくとして、ざっくり数百時間、数千時間と、勉強に充てれば難関国家資格も取れそうな時間を投じており、その「苦労」を強調するでもなく、ときに5分程度の動画にまとめてしまうのが恐ろしい。「自分は死ぬほど時間を使って、視聴者には時間を取らせない」という、話題になって久しい「タイパ」という言葉についても考えさせられるクリエイターだ。

 さて、人気ゲーム実況者を含む“インフルエンサー本”が多く出版されているなかで、なぜ鈴木けんぞうのエッセイがこれだけ注目を集めているのか。要因の一つとして、「背景が気になる」人物だということが挙げられそうだ。

 例えば、抜群のプレイスキルや優れたトーク力で有名なゲーム実況者は、わざわざ本を読まなくても、「動画」や「ライブ配信」というメインのコンテンツからその魅力や人物像がよく伝わる。一方で、実際に形になったコンテンツの外で大量の時間を消費している鈴木けんぞうのような実況者はーーファンなら沖縄出身であることや元保育士であることは知っていてもーー謎が多く、エッセイが出れば読みたくなるだろう。その意味では、ゲームのやりこみに定評があり、人気ゲーム実況グループ「ナポリの男たち」でも活躍しているshu3のようなクリエイターも、エッセイを出せば関心が集まりそうだ。

 また、そもそも合理的とは到底思えない、“人生投げ捨て型”とでも表現できそうな活動をしているクリエイターが日々どんなことを考えているのか、単純に気になる人は多いだろう。古いゲーム実況ファンとしては、こうした活動もマネタイズできる時代になって本当によかったと思う。そのおかげで「ずっとバカをやっていてほしい友人が、ずっとバカをやってくれている」という感覚だ。

 ポケモンが好きな人も、友人の隣でゲームを見ているのが好きだった人も、興味がわく人物だということは間違いない。初エッセイに注目が集まっている理由が知りたい人は、まずは動画からチェックしてみてはいかがだろう。

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