GReeeeN HIDE × naviが明かす、名曲『星影のエール』誕生の背景 「自分自身が輝けば、誰かを照らすことになる」

GReeeeN HIDE × navi対談

navi「GReeeeNであることから外れる選択肢はあり得ません」

ーー『星影のエール』の大ヒットに伴いGReeeeNは紅白(2020年12月31日『第1回NHK紅白歌合戦』)に出場しましたね。naviさん、国民的行事である紅白歌合戦はいかがでしたか。

navi:まず驚きがすごかったです。初めての無観客開催という形で普段の紅白歌合戦ではなかったですが、我々のスタイルで一体どうやって出演するのかとドキドキでした。

ーー紅白のための特別バージョン『星影のエール』でしたね。

navi:僕らは技術に関してはそこまで詳しくはわかりませんが、それを扱っている方の様子を見ていると、めちゃくちゃ大変なことをやってくださっているんだということはわかりました。僕らも応えようと、メンバーそれぞれが頑張りました。

HIDE:スタッフの方も40、50人いましたね。皆さんすごく緊張しながらも無事に終えたので、喜んでくれていました。歌い終わった僕らを見て泣いている方もいました。

ーーコロナ禍でもGReeeeNは表現の幅をグッと広げていきました。HIDEさんの飄々と、でもしっかりとした魂のなせる業ですね。

navi:HIDEはコロナに対しても本当に泰然自若でした。僕自身はHIDEとは全然違ってかなり敏感になっていました。

ーーそうでしたか。

navi:消毒も徹底的にしていましたし、感染することでたくさんの方に迷惑をかけるのは必然でしたので、絶対にコロナにならない、と一人で騒いでいました。音楽活動にあたっても自粛ムードの重圧を人一倍感じてしまって。胸の内では閉塞感の中で叫んているような感じにはなっていたかもしれないですね。もちろん、自分を奮い立たせるような気持ちも失ってはいなかったのですが。

HIDE:2020年の3月末ぐらいから家の中へ籠もれとなって、緊急事態宣言の4月から5月の2ヶ月間はコンビニへちょっと行くぐらいでも感染の危険を感じましたよね。僕は家にいながらもいつかは終わるだろう、この時間の中でも何か楽しいことはあるだろうと思って過ごしていましたが、繊細なnaviは気持ちの自粛もしちゃっているだろうな、と思っていました。

navi:そうそう。何も話さないのにHIDEにはすっかりバレていました。

HIDE:6月過ぎぐらいにみんな街に出てきて、気を付けながら経済を回そうという空気になった時に、naviを呼び出して本当に久しぶりに外で会ったら、痩せていて、青白い顔で。

navi:ステイホームが過ぎました(笑)

ーー2ヶ月間はずっと家にいたんですか。

navi:仕事はしていましたが、ずっと家には籠もっていましたね。

HIDE:naviは誠実かつ集中力があるので行動と精神がすぐ合致するんですよ。自粛をしてこれはやっちゃいけない、あれに気を付けなきゃいけないと言われて従っていると、行動に精神がどんどん合致していってしまう。なので、そこを剥がすのは僕の役目だと思いましたので、天気の良い日に原宿へ呼び出しました。

ーーその分析は正しいのですね?

navi:はい、そのとおりです。あの頃は危なかったよ。完全に気持ちの自粛に入っていました。

HIDE:外に出て太陽の光を浴びなさい、ルールに則り感染対策をして会える時には会って話そう、と伝えました。

navi:固まっていた心をHIDEに少しずつほぐしてもらって、そうすると体も元気になるもんなんですね。それでまた活力を取り戻して、リスタートしました。

HIDE:公園をぷらぷら歩いてお散歩したり。あの頃、よく歩いたよね。

navi:うん、歩いたね。それだけで楽しかった。公園歩きは推奨されていた行為ですよね。

HIDE:推奨されていたことしかしないです(笑)。naviは、自分の居場所に安心するんですよ。勉強も家でするタイプで、大学6年生の時も大学の勉強部屋には来なかったよね。

navi:寂しいけど籠もっちゃう。僕はそんな気質で生きてきたんだ。

HIDE:それは知ってたよ。naviは、僕とはまた違う場所に立って違う視点でいろいろなものを見ています。そこがこんなに長く一緒にいる理由の一つだと思います。

ーー歯科医師としてもコロナ対策には気を遣われたでしょうね。

HIDE:治療が再開されてからは、これでもかというくらい感染対策を取りました。

navi:うちの医院でも外バキューム(口腔外バキューム:空気中のウイルスなどの感染性物質を吸引するので感染予防対策に有効とされている)を設置しています。さらに、二重マスクをした上にフェイスシールドをつけています。これがですね、これまでもずっとこうしておけばよかったと思うくらい集中して治療ができるんです。コロナ禍だからこその、いろんな発見がありました。

ーー新型コロナ感染は、アーティストにとって最も苦しい選択も強いることになりました。ライブツアーの中止は苦渋の決断だったでしょうね。

HIDE:2020年のライブは完成に向けて進んでいましたのでがっかりはしましたけど、しょうがなかったですね。世の中全体が大変な状況でしたから。でも、ツアー断念のお知らせの時に皆さんにお伝えした《今は、笑顔でお逢い出来るその日まで、心のワクワクを最大限に膨らましながら、お互いにやれる事をやっていきましょう! 絶対に楽しいその瞬間にみんなで笑い合えると信じております。》というメッセージは、心からのものでしたよ。

ーーライブツアーが取りやめになっても創作は続いたのですね。

HIDE:はい、いつも以上に詞を書いて、曲を作ったと思います。

ーーHIDEさんは詞を作る時にノートに書きますよね。

HIDE:パソコンでもやりますが、最後は手書きで書くんです。手書きにした時にしっくりくる、というのが結構大事です。汚い文字でも(笑)。

ーー手紙もそうですが、字はその人の心と体を反映するものですよね。

navi:メンバーは、HIDEが手書きでノートに書いた詞を見て、その曲に込められたメッセージを感じ取ります。

HIDE:デビュー前から変わらないのが、曲を作る時の流れです。曲を作って、メンバーと一緒に仕上げていくことが好きです。出来上がった曲を聴いて、みんなで「最高」と言っているのが大好きなんですよね。それは全く変わっていません。

navi:そんなふうに曲作りが変わらずできることが、すごく幸せだなと思います。

HIDE:この「大好き」を継続するためには、自分たちが最高だと思える曲を作らないといけないと思いますので、いろいろな人と出会ったり、本を読んだり、好きなアーティストの曲を聴いたり、知らない場所を旅したり、時には休んだり。そうして生きて、曲を作るのが好きです。

ーーそうあり続ける限りGReeeeNは進化し続けるでしょうね。

HIDE:自分たちでも最高だと思えるものを追い求めていれば進化していくとも言えますが、そう簡単なものでもないと感じています。そこのところは、厳しく自分を見ている部分があるかもしれないです。

ーーnaviさんもGReeeeNとして生きる人生は、楽しいですか。

navi:楽しいです。個人としての人間ドラマもあります。それぞれがいろいろな新しいチャレンジをしつつ、でもGReeeeNという島に必ず帰ってきて、みんなが持ち寄ったあらゆるアイテムや知恵を混ぜ合わせるんです。それが重なって、今のGReeeeNがあるわけです。誰からも制約を受けませんし、自由です。でも、GReeeeNであることから外れる選択肢はあり得ません。だってこんなに楽しく、幸せなのですから。そんなに深くは考えているわけではありませんが、それが変わらない僕たちのスタイルなのかなと思っています。

ーーともに時間を重ねることで喜びは掛け算になっていきますよね。

HIDE:はい、その繰り返しですよね。

ーーGReeeeNと歯科医師、そこに別人格のような意識はありますか。

HIDE:どうでしょうか。僕はそれを客観的に感じることはないですね。

navi:うん、わかる。切り替えている感覚はないよね。GReeeeNとして集まるからGReeeeNのスイッチをオンするわけではないです。GReeeeNのリーダーであるHIDEは、歯科治療している時でもHIDEなりの動き方をしています。僕も92もSOHもそうだと思います。変に意識してスイッチをオンしたりオフしたりというのはないよね。

HIDE:それ、ないね。

ーー大学生の頃から同じですか?

HIDE:はい、変わらないと思います。例えば、世の中にすごい人がいるとして、どんなに脚光を浴びていても、その人も人ですよね。日常があって友達がいて、些細なことでも悩むでしょうし、惚れられたらうれしい。朝ごはんが美味しいとか、お腹が痛いとか。地球上のみんな、そうなんだろうなと思います。僕らも同じです。GReeeeNだからどう、とかはないですし、GReeeeNじゃないからどう、とかいうのもないですしね。

ーー自然体ですね。

HIDE:もう少しアーティストっぽく作ったら?とよく言われます。

navi:僕も全くそうですね。

HIDE:絶妙なバランスの4人です(笑)。

ーーその絶妙なバランスが一度も崩れないことが素晴らしいです。バンドやグループって、時が経つと意見がぶつかって、喧嘩したり対立したりして、メンバーが脱退したり、解散したりすることがありますよね。でもGReeeeNにはそうした片鱗も見えない気がします。

navi:確かに。考えてみたら、デビューからそうしたことが一度もないことの方が特別なんですね。

ーーGReeeeNであることと歯科医師であることに矛盾がなく、ともに過ごしながら創作の喜びを重ねているHIDEさんとnaviさんですが、デビューからこれまでに、特に心に残っている出会いや出来事があれば教えてください。ぜひ一緒に振り返りたいです。

navi:すぐに思い起こされる記憶といえば、僕は北海道の3年間です。師匠と決めた先生の元で学ぶために北海道へ移り住んだのですが、本当にハードでした。月曜日から金曜日まで、隔週で土曜日も歯科医をやって、空いている土曜日と日曜日は東京へ飛んでレコーディング。HIDEと一緒だったので耐えられましたが、今思い返しても、よく頑張ったな、と思います(笑)。

HIDE:土曜日の診療が終わって、夕方の飛行機に乗って東京へ来てレコーディングスタジオに籠もって夜中までやって、ホテルで仮眠して、起きてスタジオへ行って、最終の飛行機の時間までレコーディングしました。月曜日の朝10時には患者さんが待っているので、日曜日の最終の飛行機に乗り遅れられない。ところが、ある冬の日、新千歳空港が大雪で、予定どおりに着陸できないことがありました。羽田に戻るかもしれないとアナウンスがあって。結局、上空を2時間も旋回して新千歳空港に着陸したのが夜中の3時。もう電車も走っていませんし、何百人もいる乗客が一斉にタクシーに並ぶので長蛇の列です。翌朝の診療には間に合いましたが、北海道から東京へのスタジオ通いは、タフな体力戦でした。

navi:気が付いたら、1ヶ月半休みがない状態が続いていることもありました。でも、どうしても札幌で開業している先生について修業したかったので、途中で諦めることは思い付きませんでしたね。

HIDE:歯科医師としてあの3年間は本当に尊い時間です。札幌で徹底的に鍛えられました。

navi:もちろん楽ではありませんでしたが、胸を張ってあの3年があるから今の自分がある、と言えます。

※インタビューの続きは『それってキセキ GReeeeNの物語 増補完全版』で。

■電子書籍情報
『それってキセキ GReeeeN の物語 増補完全版』
価格:本体 1500 円+税
配信日:2023年1月20日より順次配信
発行元:双葉社
https://www.futabasha.co.jp/

〈CONTENTS〉
プロローグ
第1章 SUNSHINE!!!
第2章 遥か
第3章 声
第4章 HIGH G.K LOW~ハジケロ~
第5章 道
第6章 歩み
第7章 『キセキ』
第8章 この地へ
エピローグ
特別収録 HIDE×naviスぺシャルインタビュー
あとがき
DISCOGRAPHY

■著者プロフィール
小松成美(こまつなるみ)
ノンフィクション作家、小説家、インタビュアー。数多くのトップアスリートやアーティストの作品を執筆し、多くのベストセラーを重ねている。近著に『虹色のチョーク働く幸せを実現した町工場の奇跡』(幻冬舎)、『M愛すべき人がいて』(幻冬舎)など。

■GReeeeNプロフィール
HIDE、navi、92、SOHの男性4人組、福島県で結成されたボーカルグループ。2007年1月24日シングル『道』でメジャーデビュー。メンバー全員が歯科医師免許を持ち、医療との両立のため顔を伏せて活動中。『愛唄』『キセキ』『遥か』『オレンジ』等、デビュー以来数々のヒット曲を生み出す。『キセキ』は今も日本国内においてもっとも多くダウンロード販売されたシングルとしてギネス記録を持っている。

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