GReeeeN HIDE × naviが明かす、名曲『星影のエール』誕生の背景 「自分自身が輝けば、誰かを照らすことになる」

GReeeeN HIDE × navi対談

 小松成美によるGReeeeNの青春小説『それってキセキGReeeeNの物語 増補完全版』の電子版の配信が、本日1月20日より主要電子書店にて開始された。

 『それってキセキGReeeeNの物語』は、歯科医師を続けるために顔も名前も出さずに活動している謎多きアーティスト・GReeeeNのメンバー4人がどのように出会い、誕生したのかを、2011年から長きにわたって取材し続けてきたノンフィクション作家の小松成美が青春小説として執筆した物語。2016年に刊行されて話題となり、2022年12月にはメンバーのHIDE氏、navi氏の2万字超ロングインタビューを特別収録した『増補完全版』が発売された。

 リアルサウンド ブックでは、電子版の配信を記念してHIDE氏、navi氏のインタビューの一部を独占公開。さらにGReeeeNのメンバー・92氏が電子版のために描き下ろしたイラストを掲載する。(編集部)

HIDE「トライアンドエラーを繰り返しながら模索していくのが面白い」

92の描き下ろしイラスト

ーー2016年3月11日に出版された『それってキセキ GReeeeNの物語』が生まれ変わって発売されることになりました。HIDEさん、naviさんには今回、その記念インタビューをお受けいただき、ありがとうございます。

HIDE:いやー、驚きました! 「新たに出版? なんですと!?」と思う以上に、「やったー!」という気持ちが大きかったです。『それってキセキ』は、一歩一歩、僕らが進んできた道を振り返ることができる大切な思い出の本なので、本当に感激しています。

navi:僕たちを元に描いていただいた唯一の本なので、僕たちの曲をいつも聴いていただいている方々へ、そして新たに聴いてくださる方々へ届ける機会をいただけてとてもうれしいです。メンバー代表で臨む、この書き下ろしのインタビューは責任重大で、ちょっと緊張しています(笑)。

ーー振り返りますとGReeeeNの皆さんに出会ったのが2011年の11月。以後『それってキセキ』執筆のための取材を4年半に亘って継続させていただきましたね。2012年6月27日にNHKホールで行われた初のファン感謝祭「緑一色歌合戦」では、デジタル映像になって現れたGReeee観て、心臓を射抜かれるような衝撃を受けたことを覚えています。顔も出さず名前も伏せた皆さんが、ステージ上に現れ、歌い、踊っていたのですから。

HIDE:2010年4月1日、ハドソンとコラボしたゲーム『HUDSON×GReeeeNライブ!? DeeeeS!?』がニンテンドーDSで発売されて、あれがモーションキャプチャーのスタートでした。

ーー時を経て、デジタル技術の進化は目覚ましく、ここ数年のライブでは「本人がそこに立っている?」と思うほどです。

HIDE:そうですね、僕ら、毎年ツアーを重ねているので、テクノロジー革新の目撃者になっています。

ーーGReeeeNがデジタルになってファンの前に現れる発想は、メンバーで話し合って生まれたものだったのですか?

HIDE:はい、そうですね。メンバーと、プロデューサーのJINとも話し合いまして。今では書籍のデジタル化が普通になったし、僕もいろいろ買っていますが、紙の良さとデジタルの良さ、双方良いところがありますよね。映像だって今となっては普通ですが、昔は生身の人が登場する演劇だったはずなんです。それをいろいろな人に見てもらおうとした時に映像という技術が生まれた。映画を観て感動しないかといったら、そうではなく、みんな感動しますよね。でも、映画ができた時には「生の演劇がベストだ」と言っていた人は絶対にいたと思うんです。GReeeeNの表現は、他のアーティストさんとは違いますし、トライアンドエラーを繰り返しながら模索していくのが面白いのかなと思います。進化していく過程を見られますからね。それを僕らは、体感中です。

ーー2013年8月にはHIDEさんの第二の故郷である高知県高知市「第60回よさこい祭り前夜祭」で「みんなでよさこいプロジェクト"総踊り”」にGReeeeNの『この地へ〜』が提供され、取材で高知に入っていた私もよさこい祭りの踊り子になりました(笑)。

HIDE:高知へのささやかな恩返しのために作った曲が初めて流れたよさこい祭りは、思い出深いですね。同級生たちと祭りを見ていました。

navi:本には高知時代のHIDEのきらきらした日常が描かれていて、読んでいるだけで高知が大好きになりますね。実際、高知を訪ねて、食べて、もっと大好きに(笑)。

HIDE:この本は、僕たちが出会った郡山や、僕が中高を過ごした高知の場面もたくさんあって、いろんな想いが蘇ります。活字になって浮かび上がったストーリーに驚いたのは、僕たち自身でした。自分たちが忘れていたこと、知らなかったこと、心に秘めていて互いに伝えていなかったことなどを丁寧に文章にしていただきましたから。今でも時々読み返して、GReeeeNのメンバーに出会えて、一緒に歌えて幸せです!

navi:予備校時代から知っているHIDEと、大学に入ってすぐに親しくなった92とSOH。家族よりも長い時間を過ごしていますが、思いを全部言葉で伝えられることなんてあり得なくて、メンバーの優しさや思いやりを『それってキセキ』を読んで知ることになったんです。文章を読む度に違う発見があって、「ああ、あの時にはこんなふうに思っていたんだな」と、何度も胸がジンとしています。

ーー2021年3月30日にNHK-FMで始まった『GReeeeN HIDEのミドリの2重スリット』を毎週聴いていますが、HIDEさんと準レギュラーとも言えるnaviさんとの掛け合いが絶妙で、お二人は大学時代もあんなふうに話していたんだな、と想像しては心和んでいます。

navi:興味のあることでも、そうでないことでも、HIDEと話すことが面白くて時間を忘れちゃうんですよ。当時から何も変わっていないし、つまり進歩していないってことですね(笑)。

HIDE:naviとは、時間があると連絡を取り合って、二人で意味ないことをゆるゆる喋りながら、その合間にカッコイイ音楽を聴いたり、メロディを奏でたり、曲のコンセプトを話したりしています。大学時代にnaviの部屋に行って遊んでいた時と一緒で、自分にとっては本当に心地よい大切な時間です。

navi:HIDEの曲作りを見ている楽しさは言葉にはできないです。それに、僕自身の楽曲創作についてもHIDEに相談していて、そんなひと時を過ごしていると時間がいくらあっても足りません。音楽に加えて、僕らは歯科医療についても話し合いますからね。最新医療についての情報や難しい症例についてなども話して、日々の治療に活かしています。GReeeeNのメンバーは、同業者でもあるので本当に頼れる存在です(笑)。

navi「こういう状況下でも生まれる作品もある」

ーーGReeeeNとして活動しながら、歯科での診療もあって、特別な生活のリズムは今も守られているんですね。

HIDE:はい、ありがたいことに。僕らが築いているというよりは、周囲の人たちに守られているのでしょうね。GReeeeNが秘密を守るために特別何かしているわけではなく、そういう方が僕らの周りにいて守ってくださっているんだと思います。

navi:うん、本当に支えてもらっていますよね。

ーーずっと変わらない友人との関係と、ともに過ごす日々がありながら、2020年初頭から私たちの日常は一変しました。新型コロナウイルスによるパンデミックが世界を襲うと、エンターテインメントは不要不急と言われ、感染防止のために人々は外出を禁じられる事態となりました。未知のウイルスの出現により世界的な感染爆発が起こる中、創作活動に影響したことがありましたか。

navi:今までどおりに行かなかったところは、第一に各地方にいるメンバーと集合しづらくなったということ。その分Zoomなどを利用したネットでのコミュニケーションが増えましたね。でも、メンバーで語り合う時間は全く減りませんでした。こういう状況下でも生まれる作品もあるよね、と話して、集まれない時にも作品を作り続けました。そんなトライをしたこともあって、それはそれで時代を切り取っている、その時代を映した作品になっていると僕は思います。

ーーHIDEさんはいかがでしょうか。

HIDE:たぶん、そんなには変わっていないでしょうね。コロナだから何か変わったというのは、作品に関してはないかなと思います。いろいろなものをインプットできる時間は増えていましたので、その時に読んだものや見たものが自分のマインドを変えたというのはあるかもしれないですけれど。日々いろいろ変わっていくと思うんです。影響を受けたりもするし、与えたりもする。コロナだからこうなったというのは、僕はあまりなくて、鈍感なのかな、飄々としていましたね。ウィズコロナ、ニューノーマルを身につけつつ、オンラインでもたくさん話してたくさん笑うGeeeeN流は、壊しませんでした。

ーー2011年の東日本大震災の時もそうでしたが、音楽の力をみんなが感じ取る機会にもなったと思うんですね。普段からこれだけ音楽が溢れる世界に住んでいながら、メロディやそこにある歌詞の一節に心を震わせる人たちがたくさんいる。曲をいつものように作っていても、そうした化学反応はあったのではないですか。

HIDE:『星影のエール』という曲があります。NHK連続テレビ小説『エール』(2020年度前期放送、3月30日から11月27日まで)というドラマのテーマ曲を、という企画はその前の年にいただいたお話で、コロナになる前に書いた曲なんです。ところがコロナという状況の中で『星影のエール』に、励まされている、勇気をもらっている、未来を信じて諦めない力をもらった、というような声をたくさんいただきました。エールという言葉がより一層輝いたというか、必要だったというか。これは偶然なのですが、緊急事態宣言の時期にこういう曲を聴いていただけて良かったと思いました。

ーーいつものように作った楽曲が、時代に迎えられたのですね。

HIDE:コロナだから何かをしたということではないですが、普段からいろいろなことは考えていて、僕の中での創作は、より普遍的なものに近づいていくのかなという気はしています。普遍的なものは時代や状況にあまり捉われないかもしれませんし、むしろ、変わらずにあることで存在感を増すのかもしれません。僕は普遍的なものを作ろうと考えているわけでは全くないですが、より面白いものは何か、より真実は何かと考えていくと、変わらないものの大切さが見えてきました。

ーー時代に捉われないものが真実であるという思いの中から、「星影のエール』は誕生したのですね。どんなふうにあの歌詞と曲ができていったのか、教えていただけますか。

navi:朝ドラ『エール』のモデルになった、古関裕而さんは日本を代表する音楽家で、僕たち所縁の福島の出身です。それでまず、メンバー4人でHIDEの車に乗って福島にある古関裕而記念館へ向かったんです。

HIDE:記念館では古関裕而さんの楽曲も聴きましたし、年表でその人生も詳しく知ることができました。NHKから第1話の台本はいただいていましたが、結局それは読まず、記念館で見た年表から思いを膨らませて曲を作りました。

ーー年表を見ていたら、歌詞やメロディが浮かんでいったんですか。

HIDE:浮かんでいったんです。

ーーなんという才能なんですか。

HIDE:いやいや才能ではないんです、必死なだけで(笑)。まず、星が光っていること、つまり「星影」という言葉が浮かびました。灯台も一緒ですが、誰かにとっての光はそこに行くべき印になります。昔の人は星座を見て進んでいましたよね。恒星はその光で誰かを照らします。自分自身が輝けば、誰かを照らすことになりますし、その光は誰かを導くことにもなるでしょう。古関裕而さんは素晴らしい楽曲で人々の心を照らし、導きました。曲を作りながら愛する人や仲間たちと歩んできた古関さんを思っていたら、ああいう楽曲になりました。

ーー福島の古関裕而記念館へ行かなかったら『星影のエール』は生まれなかったかもしれませんね。

HIDE:はい。足を運んだことはとても意味がありました。そこでいただいてきた古関さんの顔写真入りのパンフレットをレコーディングの時にスタジオに置いて「古関裕而さんが見ているぞ。今のテイクで本当にオッケーかー?」という具合でやっていました。

ーーnaviさんは、HIDEさんの詞が完成する過程を知っているんですよね。

navi:HIDEとは何度かファミレスに集合して彼が書き下ろした詞を読ませてもらって、練る作業を手伝いました。ユニバーサルミュージックの山﨑吉史さんが一緒の時もありましたね。

ーー詞にはどんな印象を持ちましたか。

navi:「暗闇にほら響け 一番星」というフレーズが胸に刺さっていました。希望を強く感じる印象を受けましたね。気が付いたら褒めちぎっていました。

HIDE:naviに褒められて、気持ちよくなって、その日はぐっすり眠れました(笑)。『星影のエール』に関しては、コロナが蔓延した時期に必要とされて、そういう曲が書けたとするならば、それはそれでとても光栄です。

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