【漫画】人魚と人間が一緒に入れる銭湯があったら……“理解しあえる”という希望を描くSNS漫画があたたかい
銭湯が舞台なのは『仮面ライダーリバイス』の影響
――『人魚の湯』はどのようにして誕生したのですか?
瑠夏子:漫画賞に応募するために担当編集さんと制作した作品です。「人魚の男の子を描きたい」というのはかなり前から考えていたのですが、「この機会に実現しよう」と改めてアイデアを練りました。「人魚がどこに居たら面白いのか」と考えていた時、ちょうど『仮面ライダーリバイス』を見たんです。同作の主人公の家が銭湯なので、「銭湯にしよう!」と決めて、担当さんに提案しました。
――舞台を銭湯に決めてからは順調に制作できましたか?
瑠夏子:当初は入院中の番台のおじいさんとその代理で番台をする孫娘、そして深琴の3人が、それぞれが問題を乗り越える話を想定していました。ただ、担当さんと話し合い、最終的に「深琴の成長にポイントを絞って描こう」と決めました。早貴はそのおじいさんと孫娘のポジションを足した結果生まれたキャラクターです。
――深琴や早貴のキャラクターはどのように作り上げたのですか?
瑠夏子:2人とも特定のモデルはいません。ですが、早貴は銭湯について調べていた時に読んだ番台さんのインタビューなどからイメージを膨らませました。深琴を描く時はとにかく「美しく!」「可愛く!」と気を付けました。「人魚の少年を描きたい」が制作のはじまりだったので、深琴の人魚姿を楽しんでもらえるように作画の美しさにはこだわりました。ちなみに、人魚のうろこはアロワナの写真を見ながら描きました。こちらも「美しく!」を意識して、うろこ一枚一枚を執念で描いています。
――登場人物の感情豊かな表情が印象的でした。
瑠夏子:ありがとうございます。深琴の表情は何回も描き直しました。デッサンや線が崩れても「いい表情だな」と思えることもあれば、逆に綺麗な絵でも納得できない場合もあって難しかったです。
――モデル・参考にした銭湯はありますか?
瑠夏子:自宅の近所の銭湯をモデルにしています。銭湯は数えるほどしか行ったことがなく、制作にあたって改めてその銭湯に行きました。普段行かない場所なので、「人が少なそうな時間帯に行こう!」と開店直後に行ったのですが、実は常連さんがよくいらっしゃる時間なんですよね。全く知らなかったので驚くと同時により緊張しましたが、とてもいいお湯ですぐリラックスできました。この銭湯に行った時の体験は本作の様々な場面に反映させています。
――多様性の大切さが感じられる、素敵なラストでしたね。
瑠夏子:上手く人に語れないこと、「どうせ理解されない」と思うことは、必ずあると思います。もちろん分かり合えない人もいますが、深琴が早貴と、やお湯と出会ったように、わかり合える人も必ずいます。『人魚の湯』を読んで、そう感じていただけたら嬉しいです。
――今後の目標など教えてください。
瑠夏子:ありがたいことに2022年にデビューさせていただきましたが、引き続き商業媒体への掲載を目指して制作を続けています。ぜひ見かけた際はお手に取っていただけると嬉しいです。また、自分自身としては、ジャンル、テーマにこだわらず、描ける作品の幅を広げていくような活動ができたらと思っています。長く、良い作品を描いていきたいですね。