『呪術廻戦』伏黒恵、『チェンソーマン』アキ、『スラダン』流川……主人公と好対照な“キツネ系ライバルキャラ”といえば?
強烈な個性を持つ漫画の主人公と対をなすように、クール&ミステリアスな雰囲気をまとった“ライバルキャラ”たち。実力的に主人公の一歩先を行き、ときにいがみあいながらも実力を認め、互いに高めあっていくーーそんな彼らには、不思議と「キツネ」というモチーフがよく合う。
「ライバル」と簡単に言ってしまうと語弊があるが、例えば、現在テレビアニメが大ブレイク中の『チェンソーマン』でいうと、主人公・デンジの保護者兼監視役として共同生活を送るようになるデビルハンター、早川アキ。「狐」の悪魔と契約を結び、「コン」の一言で(普通は呼び出せない)狐の頭部を現出させ、悪魔を葬ってきた。理知的で一見、無愛想なイメージはあるものの、実は仲間思いの優しい性格。具体的なネタバレは控えるが、読者からの人気も高く、作者が鬼才・藤本タツキでなければより重用され、デンジと切磋琢磨しながらともに成長していく未来もあっただろう。
本日12月22日が誕生日を設定されている『呪術廻戦』の伏黒恵も、この型に当てはまる人気キャラクターだ。彼が使役する式神・玉犬の渾(こん)にはキツネを想起させるところがあり、アキの「コン」と同じタイミングで「週刊少年ジャンプ」に掲載されるという偶然も話題になった。寡黙でクール、黒髪に切長の目、そして高い実力……と、ライバルキャラらしい特徴を備えており、今後さらに重要な役割を担っていくと思われる。『NARUTO』のうちはサスケ(この場合、主人公のうずまきナルトが「九尾の妖狐」を身に宿しているのでややこしい)のように「闇堕ち」を経験するキャラクターもいるポジションなので、その辺りも注目したいところだ。
また、映画が大ヒット中のバスケットボール漫画『SLAM DUNK』に登場する、湘北高校のスーパールーキー・流川楓も似た特徴があり、主人公の桜木花道は「(無口で無愛想な)キツネ」呼ばわりしていた。作中ではもう一人の主人公とも言える存在感を持ちながら、流川個人を掘り下げるエピソードは意外に少なく、過去や私生活は謎に包まれた部分が大きいのも、ミステリアスな印象に拍車をかけている。流川のライバルは陵南の仙道でも、山王工業の沢北でも成立しそうだが、花道にとってのライバルは流川しかいない。そんな一方通行感もあった関係性でも、物語のクライマックスとなった山王工業戦での二人のプレーは“ライバル同士”だからこそ漫画史に残る熱いものになった。
タヌキのように人懐っこく愛嬌のあるイメージではなく、馴れ合いを好まず一見クールに思えるが、実は胸の内に熱いものを秘めている“キツネ系ライバル”たち。ファンがつきやすいキャラクターでもあり、今後も読者のお気に入りは増えていきそうだ。