「富士山マガジンサービス」書籍販売、出版社とクリエイターのマッチングサービス開始で出版業界に地殻変動を起こせるか


 雑誌の定期購読や通販で知られるオンライン書店「Fujisan.co.jp」を運営する富士山マガジンサービスは、これまでに取り組んできた雑誌のほかに、書籍などの出版物の販売にも注力すると発表した。早ければ来年から開始する予定という。

 同社には、約20年間で蓄積されてきた、約370万人もの雑誌定期購読者の顧客データを有する強みがある。2015年には東京証券取引所マザーズに上場したほか、海外の雑誌の取り扱いも行うなど、事業の拡大を図ってきた。これまでも、コミックスの定期購読や「ふくふく絵本定期便」(福音館書店)などの事業を展開し、雑誌のデータを書籍や増刊号の販売につなげる取り組みは実施している。今後は一層、それを強化していくとのことである。

 現在、ネットのオンライン書店はAmazonが圧倒的な強みを見せているが、Fujisan.co.jpは雑誌を中心にしたラインナップで、独自路線を歩んできた。Fujisan.co.jpは雑誌によってはバックナンバーの購入もできるなど、書店にはない強みをもつ。一般書店に滅多に配本されない専門誌など、ニッチな雑誌の取り扱い点数が多いことでも定評がある。

 平成以降、出版不況が叫ばれつつも、固定ファンをもつ雑誌と書籍のニーズは依然として高い。Fujisan.co.jpの書籍への本格参入は、オンライン書店の競争が激化する兆候といえよう。対して、雑誌の定期購読によって支えられている地方の中小書店の経営は、ますます厳しくなっていくことが予想される。

 また、富士山マガジンサービスは、来年から出版社とクリエイターのマッチング事業にも着手することを発表した。まずは、ディレクター、エディター、ライターの3つの分野の人材からスタートし、出版社との出会いの場を生み出す。これまで持ち込みや人づてで依頼されることも多かったクリエイターを容易に発掘し、仕事を発注するようにすることで、出版社の業務効率化を図るという。まずは200人以上のクリエイターの登録を目指し、将来的にはフォトグラファーやイラストレーターなどの他業種にも展開していくという。

 富士山マガジンサービスはこれまでも出版社と緊密な連携を図ることで、販売実績を上げ、信頼を高めてきた。雑誌販売で培ったノウハウをもとに業界に地殻変動を起こせるかどうか。今後の同社の動向に注目である。

https://www.fujisan.co.jp/campaign/20th/

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