『今日からシティーハンター』作者・錦ソクラが語る、作家・北条司のすごさ 「同じ漫画家として尊敬するしかありません」

『今日からCITY HUNTER』

 今でも根強いファンを持つ『シティーハンター』。20年振りに劇場アニメとして復活したり、大ヒットを受けて続編製作が決定したりと、コンテンツの強さは折り紙付きだ。

 「今」を取り入れて復活した『CH』は、幅広い世代の客層に受け入れられた。スマホやドローンを駆使して活躍する冴羽獠の姿は新鮮で、現代の作品として蘇らせた見事なアレンジだと言えるだろう。

 だがその一方で、かつての昔ながらの『CH』を求める声も少なくない。バブル期の匂いがする時代を舞台に、恋にバトルに一生懸命な『CH』を読み続けたいという思いもある。何を隠そう、筆者もその一人である。

 実は、そんなファンの願いを叶えた作品が存在する。錦ソクラ著の公式スピンオフ『今日からシティーハンター』だ。

 40歳女性がシティーハンターの世界に転生する物語なのだが、まるで『シティーハンター』の続編を読んでいるような錯覚を覚える。というのも、作者である錦ソクラ先生は『CH』と北条司先生の大ファンなのだ。

 今回、リアルサウンドは錦ソクラ先生にインタビューする機会を得た。熱狂的『CH』ファンふたりによるファントークをお楽しみいただきたい。(中川真知子)

『今日からシティーハンター』第一話を読む

人物の表情やデッサン、服のシワにいたるまで正確で精密

ーー錦先生にとって『シティーハンター』とはどんな作品でしょうか。(ちなみに筆者にとって『CH』は人生です)。

錦ソクラ先生(以下錦):実は、『シティーハンター』との出会いはアニメが先だったんです。冴羽獠格好いいな、楽しい作品だな、と思いながら見ていたのですが、大学に入った頃に改めて漫画を読んだら、北条司先生の表現力の高さに驚かされました。

 あの緻密で情報量の多い漫画を週刊連載していたなんて信じられなくて……。これはとんでもない作品だ、って思いました。大人の目線で読むと、『シティーハンター』と北条先生の凄さに圧倒されます。

ーー漫画家だからこそ気付く北条先生の凄さはありますか?

錦:まず、技術的なところだと、1ページの密度の高さが半端ないです。コマ割りもきっちりしていて丁寧。とてもこだわって描かれていて、1コマの書き込み量が尋常じゃないです。

 ページの繊細さと豪華さはパッと見ただけでわかります。情報の多さに加えて、細部まで手が抜かれていないんです。それを週刊連載で、しかも全ページに渡って、全話でやりとげられたなんて、純粋にすごいです。

 人物の表情やデッサン、服のシワにいたるまで正確で精密。北条先生は『CH』の連載中に画力がどんどん上達して、今でも上達し続けているのですが、そういった部分が同じ漫画家として尊敬するしかありません。もう、神だな、と。

ーー北条先生、神すぎますね……。

錦:それでいて、演出的な面がとてもわかりやすいんですよね。少年ジャンプで連載していたから、子どもにもわかるように丁寧に心理描写されているんです。だけど、内容は大人の恋愛の駆け引きなんですよ。

 キャラクターの設定の大枠はわかりやすいのですが、掘り下げるとひとりひとりがとても複雑です。その辺の、単純さの中に潜む複雑さというのが映画的であり、幅広い年齢層から支持される理由なのではないかと思っています。

ーー錦先生は『CH』のスピンオフを連載しているわけですが、北条先生の絵を真似る上で難しいところや気を遣っている部分はありますか。

錦:まず、極力絵を寄せることを意識しています。

 北条先生の絵は、デッサンをやり込んだ人の絵なんです。漫画的なデフォルメした顔もあるけれど、シリアスな顔なんかはデッサンをやり込んだ人だとわかります。一方の自分は勢いやハッタリでそれらしく描く癖があったので、北条先生のタッチを再現するなら、そういった部分を調整しないといけなくて。

 微妙なズレが致命的になってしまうのが北条先生の絵の特徴で、1ミリずれただけでも違和感を覚えるようになるんです。

 全て正確なラインだから綺麗な絵として認識されるわけで、自分の力量ではまだまだ再現できるレベルではありません。

ーーでも3巻くらいから『シティーハンター』の続編かな、と思うほど似てきましたよね。


錦:ありがとうございます、恐れ多いです。

 僕自身、本当に『シティーハンター』が好きで原作を読み込んでいるので、精一杯の誠意を持って取り組んでいます。作品を愛しているファンの方々からは色々な意見が出るでしょうし、受け入れられるかどうか不安な思いもありますが、最大限努力して世の中に出して、それを受け取られる方が判断して楽しんでもらえたら嬉しいです。

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