『ぼっち・ざ・ろっく!』『けいおん!』……萌え系音楽漫画のギターはなぜレスポールが人気?

萌え系や音楽漫画はなぜレスポールが人気?

漫画のキャラが手にする名器たち

  アニメが大ヒットしている音楽漫画『ぼっち・ざ・ろっく!』で、主人公の後藤ひとりは、レスポール・カスタムタイプのギターを愛用しているようだ。レスポール・カスタムは、ギブソンが製造するギターのひとつで、その人気の高さゆえにギブソン以外からもコピーモデルが多数発売されている。ブラックビューティーと呼ばれる黒光り(ほかのカラーもあるが)したボディと、ヘッドに輝くダイヤモンドインレイが美しい。

  ちなみに、後藤ひとりを演じる声優・青山吉能がギターを猛特訓するYouTube動画「TVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』連動企画「ギターヒーローへの道」#3」では、エピフォンのレスポール・カスタムを使用していた。エピフォンはギブソンの廉価版といえるブランドだ。

  音楽漫画を読んでいると、キャラクターが愛用しているギター、すなわち名器も気になってしまうところである。いくつか例を挙げて紹介しよう。

 『ぼっち・ざ・ろっく!』と同じきらら系の音楽漫画といえば、ご存じ『けいおん!』だ。主人公の平沢唯が初めて買ったギターであり、名器となっているのがギブソンのレスポール・スタンダードである。また、後から軽音部に入部する唯の後輩、あずにゃんこと中野梓はフェンダーのムスタングを使用している。ムスタングは日本を代表するギタリスト、Charが愛用して爆発的にヒットしたことで知られる名機である。

 音楽漫画の金字塔『BECK』には数多くのギターが登場する。主人公の田中幸雄ことコユキもやはり、レスポールを愛用している。といっても、それはバイト先の斉藤さん(後にギターの師匠にもなった)から譲り受けて手にしたモデルで、ギブソンのパチモン“ティブソン”のレスポールタイプであった。

 コユキはその後、グレッチのホワイトファルコンやフェンダーのテレキャスター、ギブソンのSG、そして『けいおん!』のあずにゃんと同じフェンダーのムスタングなどを名器としている。また、南竜介が愛用していた、ボディーに弾痕があるギブソンのレスポール“ルシール”も、読者に強烈な印象を与えたギターだ。

 音楽ゲームの『BanG Dream!(バンドリ!)』に登場するキャラクターは、国産メーカーのESPのギターを使用している。さらに、ESPからはキャラクターが愛用するギターを再現したシグネチャーモデルも発売されている。ESPでは過去に「初音ミク」をイメージしたギターも製作するなど、様々な分野とのコラボに熱心である。

なぜ萌え系4コマでレスポールが人気なのか?

 現実世界ではギブソンとフェンダーが人気を二分するが、それは漫画の世界であっても同様のようだ。ただ、きらら系の主人公の間では総じてギブソン系のギター、特にレスポールタイプが人気のようである。なぜだろうか。勝手な推測をしてみたい。

 私はレスポールといえば、ジミー・ペイジやスラッシュ、ザック・ワイルドなどが激しくかき鳴らすギターというイメージを持っていた。しかし、女の子キャラにもばっちり似合っているのである。そう、レスポールはハードロックのギタリストはもちろんだが、ぼっちのJKから軽音部のJKまであらゆるタイプのギタリストと相性が良いのだ。

 レスポールが1952年に発売されて以来、一度は製造中止になったものの復活を遂げ、今年で70年目を迎える超ロングセラーになっている。その理由のひとつは、傑出したデザインのためでもあるだろう。

 『けいおん!』の唯は初めて買ったレスポールを「ギー太」と呼んで、一緒に寝るシーンがあった。もしかすると萌え系4コマでは、レスポールのあの丸っこいフォルムがかわいいと考えられ、好まれているのかもしれない。

 ちなみに、現代のギャグ漫画の巨匠・漫☆画太郎も音楽漫画を描いている。それは『ハデー・ヘンドリックス物語』という作品であるが、この漫画にはフェンダーもギブソンも一切出てこない。画太郎オリジナルのギターブランド(もちろんギターの形状もオリジナルだ)が登場する。登場するギターのモデル名で既に笑えるので、気になった人はぜひ単行本をチェックしてほしい。

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