映画『THE FIRST SLAM DUNK』で豊玉高校戦は描かれるのか? 作品貫くテーマが詰まった“名勝負”
「バスケットは好きか?」
さて、先ほど私は、この湘北高校と豊玉高校の試合では、『SLAM DUNK』という作品を貫く大きなテーマがわかりやすい形で描かれていると書いた。それは、簡単にいってしまえば、「好きなことだから人はがんばれる」ということだ。
むろん、本作の場合、「好きなこと」とは「バスケットボール」のことであり、主人公・桜木花道はもちろん、主要キャラのすべては、(ライバルも味方も)この「好きなこと」のために、青春を賭け、さらなる“高み”を目指しているといっていい。そしてそれが、多くの読者の共感を得ることにもつながっているのだ(なぜならば、誰にでも夢中になれることの1つや2つはあるだろうから)。
試合の終盤、北野前監督が観客席にいることを知った豊玉高校の選手たちは、それまでのダーティなプレイを捨て、自分たち本来の姿を取り戻していく。
かつて、北野は彼らにこう問うていた。
「バスケットは好きか?」
その言葉を思い出した南たちは、格下であるはずの湘北相手に本気で勝負を挑んでいく(試合の残り時間は約2分で、湘北が10点リードしているが、南たちは諦めない)。その姿を見た金平監督も、涙を流しながら選手たちを応援する(この時、北野監督解任以来、初めて豊玉高校バスケ部は1つになったといっていいだろう)。
思えば、『SLAM DUNK』の別の場面では、湘北高校の選手たちも、「安西先生……!! バスケがしたいです……」(三井寿/8巻)だとか、「(バスケが)大好きです 今度は嘘じゃないっす」(桜木花道/30巻)などといって、“バスケへの熱い想い”を打ち明けていた。繰り返しになるが、好きなこと、楽しいことだからこそ、人はがんばれるのである。そして、その姿を見た人たちも、勇気や元気をもらうことができるのである。
そういうことをあらためて思い出させてくれるこの湘北高校と豊玉高校の試合もまた、『SLAM DUNK』の“名勝負”の1つであった、といってもいいのではないだろうか。