桃太郎は半グレだった? 京極夏彦らが集めた「ひどい民話」が本当にひどい

京極夏彦らの「ひどい民話」がひどい

「福は寝て待て」で早起きの爺さんは権現様にお参りしに行く途中、犬の死体を見つける。〈せっかく犬が死んでいるんだから〉と拾い、それをまだ寝ている朝寝の爺さんのところに持って行って投げる。すると死体は小判になって寝ている爺さんは福を得たのでした、めでたしめでたし。

〈「せっかく死んでいる」という部分は、黒さんが作ったわけではなく?〉(村上)
〈そのいい回しは僕が作ったかもしれないですが、でもそういう感じの話でした(笑)。〉(黒)
〈「せっかく」の部分付いていなかったら余計おかしいよ。犬、死んでいたから持ってくって、そもそもおかしい。〉(京極)

 このように欠落部分を考察する中で、語り手による話のアップデート疑惑が浮上するスリリングな場面を、本書では目撃できたりもする。

 読書の秋に名作を読みすぎて、〈物語って出来すぎていると面白くないんです〉(京極)なんて境地に達した人は、ひどい民話で気分転換もいいかもしれない。

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