『東京卍リベンジャーズ』が描いた“洒脱な王道” 漫画編集者が語る、大ヒットの要因と次回作への期待

『東京卍リベンジャーズ』大ヒットの要因

 「週刊少年マガジン」で連載中の人気漫画『東京卍リベンジャーズ』が、11月16日発売号で約6年間に及ぶ物語に終止符を打つことが明らかになった。アニメに実写映画、政府広報も含むさまざまなコラボレーションまで、近年で最もヒットしたコンテンツのひとつになったが、その魅力はどこにあるのか。

目新しい設定ではなく、地力で読ませた作品

 ヤンキー×タイムリープという設定の妙が良く語られるところだが、漫画編集者で、『コロナと漫画~7人の漫画家が語るパンデミックと創作』などの著作で漫画評論も展開する島田一志氏は、『東リベ』は「設定が目新しいからヒットしたのではなく、しっかりと芯のある、地に足がついた作品だったことが大きい」と評価する。

「アウトローを主人公とするループものとして、『代紋<エンブレム>TAKE2』がよく引き合いに出されますが、“ヤンキー×SF”という大きな括りで見れば、『幽☆遊☆白書』や『ジョジョの奇妙な冒険』第4部(ダイヤモンドは砕けない)など、リーゼントの“不良少年”がSF的な設定で活躍する作品は、実は少なくありません。本作は新鮮さよりも、王道の少年漫画としての魅力が大きい。車田正美以降、複数のキャラクターが戦う集団バトルが少年漫画のひとつの王道になりましたが、『東リベ』にはまさに、主役級の人気キャラクターが多数登場させ、横軸での広がりをみせながら、しかし“花垣武道の物語だ”という縦軸がブレない。百花繚乱のキャラクターの中にあって、武道は一見、非個性的ですが、少年漫画の主人公として、しっかりキャラクターが立っています」

ヤンキー漫画の普遍的な魅力と画期性

 その上で、『東リベ』には“ヤンキー漫画”の普遍的な魅力と、それをアップデートした画期性があると、島田氏はいう。

「創作のモチーフとして高い人気を持つ『新撰組』について、以前、武田鉄矢さんが暴走族に例えていたのが印象に残っています。確かに『ヤンキー』も、さまざまな出自の腕自慢が集まり、“男気”で繋がり、新撰組の羽織のように揃いのトップク(特攻服)を着てサクセスしていく、というイメージに共通点があります。現実に見かける機会はほとんどなくなりましたが、漫画の世界では生き続けていくのだろうと。『東リベ』はそうしたヤンキー文化をこの時代に合った形で、オシャレに表現している。当初、単行本の装丁(カバー)は、『クローズ』のような“見るからにヤンキー漫画”というデザインでしたが、早々に現在のような、一人ひとりのキャラクターに焦点を当てたトレーディングカードのようなデザインに変更されており、これが英断だったと思います」

 洒脱な雰囲気を持ちながら、『東リベ』は不良行為の愚かしさや恐ろしさもシビアに描いており、そのバランス感覚も、幅広いファンを獲得した要因になっていそうだ。

蛇足どころか潔さすら感じた最終章

 これだけの人気作になると、終わらせ方が難しいと、漫画編集者の視点から島田氏は語る。読者の間では、最終章は蛇足になるのではいかという危惧も一定程度あったように思えるがーー。

「批判されるべきことではありませんが、少年漫画の歴史を見れば、大ヒットしたゆえに無理に引き伸ばされ、作者が本来、描きたかった物語の流れやテーマを見失ってしまった例はいくらでもあります。しかし『東リベ』の最終章は、読んでみれば伏線がうまく回収されており、きちんと構想されていたものだということがわかる。むしろ物語はスピーディーに進行しており、まだまだ続けられそうなのに終わるのか、という潔さすら感じます。近年のヒット作では『鬼滅の刃』にも同じことを感じましたが、人気の絶頂にありながら、描くべきことを描いて終わる、というのは、やはり美しい。後続の作品に良い形でバトンタッチできるのではと」

 例えば、同じく「週刊少年マガジン」で連載中の人気サッカー漫画『ブルーロック』にも、個性的なキャラクターの複数投入、単行本の装丁など、『東リベ』との共通点が見られる。同誌は近年、戦略的にラブコメ作品を強化しており、島田氏はそれを「正しい方向性」と評価しつつ、「今後はカッコいい男の子が出てくる漫画が増えていくのでは」と予想している。

和久井健という作家のさらなるブレイクに期待

 多くの人気キャラクターが存在する本作のこと、スピンオフ作品の連載や、気が早くも続編の登場にも期待してしまうが、むしろ「和久井健さんの新作が読みたい」というのが、島田氏の意見だ。

「前作『新宿スワン』は青年漫画ということもあり、荒々しくリアルな画風で、誤解を恐れずいうと、和久井さんは“絵で売る”作家ではありませんでした。それが『東リベ』で別のフェーズに進み、絵の素晴らしさで物語を読ませる凄まじい力を見せた。もちろん『東京卍リベンジャーズ2』もいいのですが(笑)、この画力を持って次にどんな作品を発表するのか、本当に楽しみになりました」

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