『HUNTER×HUNTER』再開でジャンプはさらに面白くなる? 漫画編集者が語る、冨樫義博“週刊連載復帰”の意味

 2018年11月から休載していた「週刊少年ジャンプ」の人気作『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博)の連載再開が10月11日、同誌の公式Twitterで報告された。再開は10月24日発売の47号となり、約3年11ヶ月の間、待望していた漫画ファンはお祭り騒ぎになっている。

 漫画編集者で、『コロナと漫画~7人の漫画家が語るパンデミックと創作』などの著作で漫画評論も展開する島田一志氏は、冨樫氏の「週刊連載」での復帰が何より喜ばしいと語る。

「『HUNTER×HUNTER』ほどの人気作ですから、月刊誌に移籍することも、『ジャンプ+』のようなアプリで不定期連載することもできたはずですが、連載のペースが変わると、作品のテンポも大きく変わります。冨樫さんは週刊連載でバリバリやってこられた作家であり、それを知っているからこそ、過酷な週刊の現場に戻ってきたのでしょう。カッコいいと思います」

 島田氏にも週刊連載作品の編集を担当していた経験があり、そこで感じたのは、「“追われる”なかでこそ生まれる、想定を超えた力がある」ということだという。時間をかけることで生まれるクオリティもあるが、「走りながら考える」ことで物語がドライブしていく、週刊連載ならではの強みもある。

「冨樫さんの作品でいえば、特に『幽☆遊☆白書』の後半などは、キャラクターや物語が作者の手を離れて動いているような感覚で、凄みがありました。休載期間にじっくり練り上げられた物語にも当然、期待が高まりますが、それを超えたところからが、さらに楽しみです」

 『HUNTER×HUNTER』の連載が再開されることで、「週刊少年ジャンプ」全体がより面白くなるだろう、と島田氏は予想する。現行の人気作にも影響を与えている作品が、再び本誌に戻ることに大きな意味がありそうだ。

「『ジャンプ』という土壌で育った、車田正美以降の複数キャラクターによる異能バトルを大きく飛躍させたのが冨樫さんであり、『HUNTER×HUNTER』です。もちろん他誌にもそうした作品はありますが、ジャンプ作品は凄みが違う。そうした歴史の上に新しい作品が生まれてきているなかに、歴史の一部である冨樫さんが再び参戦することで、どんな化学反応が起きるのか。世代は違っても作家同士、お互いに意識しないはずがなく、雑誌全体が活性化するのではないかと思います。とはいえ、今の段階では、『HUNTER×HUNTER』がどういう形で連載再開されるのかはわからない。もしかしたら毎号掲載ではなく、短期集中連載や隔週連載、あるいは、月イチ連載などの形になるかもしれない。それでも、週刊誌、とりわけ『週刊少年ジャンプ』という特別な“場”でなければ生まれないものはあると思います」

 2022年は、作者・三浦建太郎氏の急逝により一度はストップしていた『ベルセルク』の連載も再開され、「もう続きが読めない/読めないかもしれないと思っていた二つの大きな作品に動きがあり、漫画ファンとしてうれしい年になった」と島田氏。まずは漫画ファンの多くが待望した『HUNTER×HUNTER』の再開を喜び、復帰第一話の掲載を楽しみにしたい。

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